私は服を着ているでしょうかゲーム

「えへへ~っ。サナ、わたしは今、服を着ているでしょうか~」

  

 またミノリが、お風呂場で遊んでいる。


 彼女が持っているのは、発泡スチロールに大小様々な真円を開けた、いわゆる穴開きボードだ。

 ボードを浴槽にまで付けて、ミノリが半裸で肌色部分だけを露出している。


 いわゆる、グラビア写真などで見るアレだ。

 肌色だけしか露出していないから、全裸に見えるやーつである。

 実際は服を着ているやーつ。


 はあ……つきあわされるこっちの身にもなれっての。


 こいつは極度の照れ屋なくせに、なぜかチラリズムに異常な関心を示している。

 極端に短いスカートを履いて、ワタシに見せつけてきたことも。


 胸もないのに紐ビキニで抱きついてきたときは、よかった。

 

「うーん。わかんないなー」


 適当に、受け答えする。


「もーっ。マジメに回答してっ」


「ていうか、そんなのどこで売ってるんだ?」

 

「作った。DIY」


 そうだ。コイツはムダに器用なんだった。


 ミノリは私服も古着を改造した自作が大半で、趣味はコスプレである。

 工作部屋どころか、自撮り部屋まで持っているのだ。

 キュートな写真なら、ミノリはネットにアップする。

 だが、センシティブな姿を見せるのは、ワタシだけだ。


「その創造性はどこから?」


「溢れ出るリビドー?」


 ミノリは、虚空を見上げる。

 リビドーの意味さえ知らなそう。


「照れ屋なくせに、ワタシには見せるんだ」


「サナはわたしを悪く言わないからー」


 ミノリは身体つきが貧相なため、ロリ好きな層には受けが良い。ワタシを含め。

 だが、それゆえにアンチも多数いる。


 守ってあげたい系であるがゆえに、媚びた女に不快感を持つ層には嫌われていた。


 こいつが媚びた姿なんて、見たことないのに。


「ていうか、見せたいならボード外せばいいじゃん」


 ワタシが穴あきボードに手を伸ばすと、ミノリがボードで身体を隠した。

 

「もー! サナもー!」


 牛のように鳴きながら、ミノリが反抗する。

 

「何よ? 見せたいなら見せればいいって」


「だからもーっ! サナだめだってばもーっ!」


 ワタシがボードを動かそうとするたびに、また牛が鳴く。 


「見せそうで見せないぎりぎりのラインが、いいんじゃんか!」


「ワタシはそうやって出し惜しみさせるほうが、モヤっとするんだが?」

 


「ちぇー」


 ワタシの発言を聞いて、ミノリがボードを惜しげもなく倒した。

 

 浴槽のやわい部分にぶつかって、ボードがボキっと折れる。

 

 ミノリの服装は、水色に白い水玉の紐ビキニだった。


「正解は、着てましたー」


 ふてくされながら、ミノリが答える。

 

 うん、ひょろい身体に紐ビキニ、いい。

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