清楚メガネのあの子はギャルじゃないのに、スカートだけやったら短い
マリノは前髪パッツン清楚キャラであるが、なぜかスカートだけがやたら短い。
かといって、ギャルとも違う。
ギャルカーストからも、話しかけられない。
男子の視線を狙ってる、って感じでもなかった。
私には、マリノの思考はわからない。
「横、ええ?」
昼休みに、突然マリノが私の横に。
手芸部の部室だぞ、ここ?
なんで私がここにいることを、コイツが知っているのか?
私ら、面識あったっけ。
「なあトモヨちゃん、膝枕したろか?」
ふにゃあ、とした関西弁で、マリノが太ももをポンポンと叩く。
「ななな、なんで膝枕なんて」
なぜ私が、膝枕してほしいってわかった?
「アハ! 童貞みたいや。かわいいね」
実際、童貞かもしれない。
「でも、なんで私に話しかけてきたん?」
「メガネ仲間やし。それにあんたが作ってんの、メガネケースやん、それ」
「ああ、これ?」
これは、祖母の老眼鏡入れなのだが……。
敬老の日に、プレゼントしてあげようとしていたのだ。
「せやったん。てっきりウチにくれるんや思ってたわ」
「ごめんな。ちゃんと作るさかい、堪忍な」
「まあまあ。ゴハン食べたら、横になりや」
マリノはフルーツサンドといちごミルクを食べながら、こちらが弁当を食べ終わるのを待つ。
「ほな。お邪魔します」
ああ、やわらか。ヤギブーよりモッチモチしてる!
清楚メガネキャラだから、もっと骨ばっているのかと思っていた。
「メガネ外しても、トモヨちゃんってかわいいね」
「ありがとう。でもマリノの方がカワイイて」
「ウチはかわいないて。メガネが本体やって」
手芸部で作ったシーツを敷いて寝転がっているが、これさえ不要かも。
直に触れたいああもうガマンできない直に触れてしまえ!
「なんでミニスカギャルやのに、メガネなん?」
「単に近眼やねん。スマホ老眼いうねんて」
「何見てん?」
「小説サイト原作のマンガばっかり」
それは、目を悪くするかも。スクロールしまくるから。
ギャルと話が合わないのも、度を越したマンガヲタだからだった。
話の内容についていけるのは、私くらいだろう。
「視力回復動画とか見てるねんけど、効かへん」
「回復が追いついてへんのよ。多分」
「せやろね」
その点、私を苦しめてきた首のコリは、ヤギブー以上に快適な太ももによって回復しつつある。
「ありがとう。ほな作業再開するわ。はよ完成させて、あんたにも作ったるわ」
「おおきに、トモヨちゃん」
数週間後、スマホ漫画キャラのイラストに似せたメガネケースをマリノにプレゼントした。
それでも、あの膝枕にはかなわない。
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