うちわで揺れるスカート、そそる!

「風流だねぇ、駅の空調で揺れるスカート」


 壁掛けの空調で涼んでいるJKを見ながら、ミナがオジボイスでニヤニヤする。


「やめろ見てやんな」

「ロングスカートというのがいい。ふわふわ揺れているさまを眺めているだけで、ああー、いいもん見れたなーって気分になる」

「発想がオヤジすぎる」

「でも、ほんとにいいよ、ジュリ。ウチの女子なんてスカートの中を下敷きで仰いだりするじゃん。男子に見られないようにさ」


 女子校あるあるらしいが、あたしは中高ともに共学なのであんまり見たことはない。

 JC時代に女子校だった子は、ついついやってしまうらしい。


「あんたもやってたじゃん」

「あたしはいいんだよ。需要がないから」

「そうか? この間、ショタっぽい子がドキドキしながら見てたじゃん」

「あれは……さすがに」


  コイツ、マジで自分が突っ込まれるの弱いな!

 そこがかわいいんだよ。


「意識させちゃってたりして」

「ないない。絶対ない。もっと渋川さんとか、清楚系が好きだっての」

「でも、あんたも地味系で、男子でも『いけるかも』って思わせちゃってんじゃん」

「だからないって。ジュリみたいに明るかったらわからんが」

「あたしが別け隔てなくしてんのは、波風立てたくないだけだっつーの」

 

 教室に入って、さっそくウチワで顔を扇ぐ。

 エアコン常備の時代に生まれてよかった。

 昔は、図書館にしか設置していなかったと聞くが。


「マイウチワ?」

「駅で配ってたじゃん」

「あー、ティッシュに気を取られて見てなかった」


 あたしは、ウチワでミナを扇いだ。


 メカクレの前髪がふわっと広がった。


「――!!」


「ん?」


 また、ミナは元のメカクレに戻る。

 


 今のはなんだ? 魔法か? 

 めっちゃ美少女が目の前に現れたぞ。


「どうした?」

「なんでもない」


 あたしがキョドっても、ミナはなんともない顔をしていた。

 が、すぐに気づいたらしく、前髪をしきりに気にしている。


 これは、そりゃあ男子勘違いするわー。

 男子はミナのスカートじゃなくて、顔を見ちゃってたんだな。


 あたしたち女子も、ミナの隠れた目を見たことが少ない。

 あっても片目くらいで。

 水泳の授業も、コイツはシュバっとゴーグルをつけてしまう。

 かたくなに、目を見せることを嫌うのだ。


 うっわ。その片鱗見たわ。

 これはもう、あたしの独占な。すまん男子ども。この子の顔ドアップは渡せないって。


「おー、斉藤さん透けブラ! 緑! やりますなあ!」

 


……やっぱ、顔だけでいいや。

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