かき氷のシロップって、どれも同じ味って言うけどさ。
「ねえジュナ。かき氷のシロップって、どれも同じ味だっていうじゃん」
「そうだね、ミサ」
ミサの問いかけに、私はうなずいた。
私たちは、海の家で畳の間に腰掛けてかき氷を食べている。
泳いだ後のかき氷、これが我が地元での、夏休み定番レジャーコースだ。
ミサはいちご、私はメロン味である。オーソドックスな味。
「宇治金時もなのかな?」
「宇治抹茶とアズキ入りだから、違うんじゃないかな?」
「だよね」
私は適当に答えたんだが、ミサは納得してくれた。
「食べる?」
「抹茶ムリ」
「わたしもー」
お互い、苦い味は得意ではない。
「じゃあさ、ブルーハワイって何?」
「ブルーハワイって、カクテルがあるんだって。パパが言ってたよ」
私の父はバーテンダーなのである。
「お酒を扱っている家だけあって、すごい詳しいね」
「詳しいのは父だよ」
「実際のブルーハワイって、どんな味がするの?」
「ブルーキュラソーってカクテルを使うんだって。香りはオレンジなんだけどね」
パイナップルジュースとレモンジュースをクラッシュアイスとともにシェイクするそうだ。
「甘そう」
「まあ、私たち未成年だから飲めないけど」
「だねえ」
中学生が飲んでいいドリンクではない。
「ねえ、ホントにシロップって、味が違うのかな?」
「中ボーの私たちに、そもそも味がわかるのか問題ってのもあるよ」
「いいじゃん。試してみようよ」
ミサが、かき氷をストロー型スプーンで差し出してくる。
「はい、ジュナ」
「え、いいの? ホントに食べちゃうよ」
「いいから」
自分が使ったスプーンで、惜しげもなくすくって寄せてきた。
てっきりお互いがスプーンを差し合うものだと。
「いただきます」
わたしは、いちご味を口へ。
「どう?」
しっかりと噛み締めた後、飲み込んでいく。
「わかんない」
「じゃあ、食べさせてみて」
身体を寄せて、ミサが無防備に口を開く。
うわ、これ「ちゅう」の距離じゃん。
もしくは男子が見たら、絶対「アレ」を連想させちゃうかも。
ダメダメ。そんなの許さない。
「いくよ」
私は手早く、メロン味をミサの中へ放り込む。
「どう?」
「おいしい」
「じゃなくて」
「ジュナの味がする」
「ふざっけ……」
「でも、メロンっぽくない。甘いのは甘いんだけど」
自分の分と食べ比べながら、それでもミサには違いが判別できないみたい。
やはり、中学生はバカ舌なんだ。
味の微妙な違いなんて、わからないのだろう。
「泣きの一回、いってみようよ」
再びミサが自分のスプーンを向けてみた。
「どう?」
「同じ……味かも?」
少なくとも今の私は、口の中がミサと同じ味だ。
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