クリームソーダ大好きだけど、ゲップ出そう……。

「美穂、クリームソーダ好きだったよね? 頼んどいたから」

「え、うん」


 トイレから戻ってくると、陽子がわたしの好きなドリンクを頼んでくれていた。


「クリームソーダが好きって、覚えててくれたんだあ」

「そりゃそうよ。『ドリンクとオヤツを両方楽しめるって最強!』って言ってたじゃん」


 そういう陽子は、コーヒーフロートを頼んでいる。

 そっちも最強なんだよなぁ。


 わたしたち一家はエビグラタンとあんみつ、陽子親子はナポリタンとチョコケーキである。

 どっちも親子揃って頼むメニューは一緒だ。


「コーラフロートもあるじゃん。そっちにしなかったんだ」


 話をしながら、わたしはソーダとアイスを適度に混ぜる。


 たしか陽子はゲコで、居酒屋でもジンジャーエールしか飲まない。

 それも、五年以上前のことだ。

 お互いに寿退社して、三〇を過ぎて久々にデパートで会った。

 再会を記念して、デパート内のカフェでお茶をしている。

 

「あたし、炭酸ダメでさ。最近気がついた。『飲みすぎるとウツになる』って聞いたし、炭酸は控えてるんだよね」


 でも、甘さで言えばメロンソーダの方が上かもね。


「ああ、おいしい」

 

 だけど、たまに飲むと強烈に来る。

 このわざとらしいメロン味!


 で、バニラアイスと!


「くう」


 適度に糖分と脂肪分を摂取できる、凶悪なジャンクオブジャンクですよ!

 

 向かいでは、陽子がバリバリと氷を食べている。


「お互い子ども持つとねえ、なかなか会えないよね」


 わたしたちは、それぞれ娘を連れていた。

 子どもたちも、親と同じドリンクを頼んでいる。


 娘は、口の周りをアイスでベッタリにしていた。

 子どもの頃のわたしと同じように。


「げほ。うーん」


 ゲップをした娘が、鼻を摘んだ。

 親と同じ体質なのだろう。


 わたしも、ゲップをすると鼻がツーンとなる。


「あ、頼んだらやばかった?」

「いい、いい。ありがとー」


 気を使わせてしまった。


 少しずつ飲んだらゲップも痛くないと教えて、ちびちびクリームソーダをいただく。

 折半して頼んだ、ポテトフライもシェアしつつ。


「よく覚えてたね。わたしがクリームソーダ好きって」

「そらそうよ。幼なじみじゃん」


 我が子にナポリタンを食べさせながら、陽子は笑う。

 

「あんたも、ハナがツーンってなるんだよね」


 鼻を摘みながら、陽子がわたしをからかってきた。


「もう。娘の前でやめてよ」

「ゴメンゴメン。でもかわいかったなぁ。ちょうどこの子くらいでさ。よく似てるね」

「あんたのお子さんも、よく似てる」

「そうかな? お父さん似だって親戚じゅうに言われるんだけど?」

「似てるよぉ」


 だって、さっきからうちの娘がゲップするたびにウットリしてるもん。

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