清楚キャラがショートになった ーpixivお題『ショートカット』よりー
「えっ! ミサキ、どしたん?」
黒髪ロングがトレードマークだったミサキが、ショートになって学校に現れた。
失恋か? といってもここ女子校だし。
マジ何があったん?
まあ、これはこれで似合ってるけどさ。
お嬢様の甘さが抜けて、バリバリのキャリアウーマンって見える。
あたしがポニテだから、ちょうど釣り合いが取れそう、って思った。
「ココ、聞いてきなよ」
友人たちが、あたしにワケを聞いてこいって言ってくるんだけど?
でも、聞ける空気じゃないよね。
それにしても、腰まで伸びていた髪をズバッと切ってしまうなんて。
相当、なにか思い詰めていたに違いない。
「はい。席付けー」
担任のコガラシが、出席を取る。
ミサキとコガラシができているってウワサは、あたしも知っていた。
しかし、あたしは事実を知っている。
コガラシが、副担の女教師と以前からいい感じだって。
その副担は、あたしの姉である。
とはいえ、それだけの理由で髪まで切るかなぁ。
やっぱり気になる。
ああ、あたしが聞くしかないかぁ。
昼休みにパパッと聞いてしまおうっ。
「なーっ、なんで切ったん?」
学食のやや甘めなカレーライスを食べながら、横からミサキの髪をすく。
「やめてよ」
そっけなく、ミサキはあたしの手を軽く払う。
すぐ、かき揚げそばをすする作業に戻った。
「失恋でもしたん? 相談してくれたらよかったのに」
「できなかったんですもの」
この回答なら、失恋したって肯定したと見ていいよね。
「なんでよ? あたしら、おさななじみじゃん。あたしらの友情って、そんなもんかな?」
「大げさよ」
あたしたちは、頭の出来も地頭のよさも違う。
それでも、うまくやっていたつもりだったのに。
「あんたが失恋した相手って?」
「教えないわ」
ミサキは手を合わせて、お盆を返しに行く。
放課後、「ちょっと残っていて」と言われて、あたしは下校時間まで待った。
教室には、誰もいない。
「なあ、無礼を承知で聞くけど、失恋の相手って」
「コガラシ先生ではないわ」
あっけなく、回答は出た。
だとしたら、誰だよ?
「あんたのお姉さんよ」
あたしは、自分のことのように胸が飛び跳ねた。
「私は卑怯なオンナよ。あんたと仲良くなったのだって、お姉さんが目当てだったのよ。それなのに、あの人はこちらの気持ちも知らないで」
カバンをギュッと掴みながら、ミサキは大きくため息をつく。
「気が済んだでしょ。だから、あなたには話したくなかったの。私のこと、嫌いになったでしょう? 友人関係も、解消してくれていいわ」
「なくならないって」
「え?」
ミサキが、首をかしげた。
「あたしは、ずっと友だちだよ。ミサキの」
「でも、私の目的を知ったらあなただって幻滅を」
「しなかった。だってさ、あたしがこんないい学校に入れたのはあんたのおかげだし、他にも面白いことを教えてくれたじゃん? 頭の悪いあたしにさ。普通、利用しているだけのやつに、そんなことするかな?」
あたしは、まくしたてる。
ミサキと、友だちでい続けたいから。
「友だちでい続けて『あげたい』からなら、ムリをしなくても」
「無理してんのは、どっちだっつーの。わざと嫌われようとしちゃってさ。だったら、あたしは意地でもあんたをキライになんてならない。だってさ」
あたしは、立ち上がる。
「この気持ち、どうしてくれんのよ」
もう、そこから先は言葉なんていらない。
あたしが髪を切るなんてことには、ならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます