レインコート二人羽織 ―pixivお題『レインコート』より―

「ちょっと狭い暑苦しい!」

 

 ミカが、わたしのレインコートに入ってきた。



「脱げ! チャリ乗れない!」

「えーいいじゃんサカキ。傘忘れちゃって」

「いやいやパーカーとかムリだし」


 かなりムチャな二人羽織だ。


 普通の羽織なら生地が多少伸びるので、後ろに人が入っても平気だろう。


 しかし、レインコートとなると。


「パーカーはサカキが使ってくれていいので」

「暑い! 梅雨だからなお暑い」


 ひとまず傘を買うために、コンビニに行こうとなった。


 この状態のままで。


 わたしはチャリにも乗れず、ベタベタする背中をガマンしながら歩く。


「サカキ、今日ブラピンクなんな」

「うるっせスポブラ絶壁は黙ってろ」



 体育の授業で見ただろうに。


「ふー。ほら、傘買って帰るぞ」

「まってよ。冷たいもの食べから帰ろう」


 フードコートで、アイスを食うことに。


 コンビニ独特の、かったいソフトクリームをペロペロ。

  

 わたしは、ちょいお高めのアイスをミカからおごってもらう。


「ねー。二人羽織もたまにはいいでしょ?」

「うるっせ暑苦しいわ」

「機嫌直してよぉ。アイスおごってあげたじゃん」

「まだだ。アイスカフェオレも頼む」

「えー」

「えーじゃねえよ」


 ついでで、アイスのカフェオレも貢がせる。


「なんか、風が強くなってきたね」

「だから、レインコートにしたんだよ」


 朝から天気予報を見ていなかったのだろうか。


「あたし、朝はYou Tubeの切り抜きしか見ない」

「なんの?」

「ホロライブ」


 天気とは程遠いな。


「ちょっと時間潰そうよ。そうだ、期末の範囲勉強しよっと」

「ここは、長居したら怒られるぞ」

「そっか。じゃあ駄弁ってよう」


 その後、他愛のない話をした後、雨が弱くなってきた。


 予報ではまだ雨が続くが、風の方に気をつけろとのこと。

 

「ほら、これくらいなら傘さしても大丈夫だろ」

「わーい」


 店から出て、ミカが傘を開く。


 途端に、ビュオオと突風が。

 負けじと、ミカが踏ん張る。


「あっ!」


 傘が見事に、裏返った。

 300円もしたのに、一瞬でぶっ壊れるとは。


「ふええ、サカキィ」


 風がやんだのを確認した後、わたしは傘をバッとやって元に戻してやる。


 それでも、完全には修復できていないようだ。


「コンビニ傘の強度なんて、こんなもんだ。いいから早く帰る、ぞ……」


 もぞもぞと、またミカがわたしの背中にまとわりつく。


「いいかげんにしろっての」

「こっちの方が確実に濡れないし」

「天才的発想をしたみたいな言い方はやめい。あと離れろ」

「家が隣同士なんだからいいじゃーん」



 結局、ミカはうちの玄関までついてきた。


「ところでお前、自分が乗ってきたチャリは?」

「あ……」

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