「婚約破棄する」「どうして!? 悪役令嬢だから!?」「私が女だからだ」 ―pixivお題『花嫁』より―
「サクヤ。婚約そうそう悪いが、ご縁がなかったということで」
ユリシーズ・ザマァルトリア王子が、私に婚約破棄を訴えてきた。
よりにもよって、初夜に……。
うわーこれはあれだわ。
外見おっとりしていてハラグロな妹による意地悪な仕打ちだわー。
こうして私は辺境に飛ばされて、そこでナイスミドルと一夜をともにするんだわー。
あーやだやだ。侍女と逃避行してやろうかしら。
どうせアレなんでしょ?
ベッドルームに妹が隠れていて、NTR展開なのでしょ?
前世の記憶がある私には、このあとのゲーム展開がわかっているんだから。
ここは異世界。
私は転生者。
徹夜しようとエナドリとストゼロをチャンポンしたら、血管が切れて頭からフローリングにぶっ倒れて死んだのよ。
結婚式のダンスパーティで頭を打って、前世の記憶が戻ったのよー。
「なぜですの!? 私が悪役令嬢だからですの!」
一応前世の記憶だと、私はこのゲームの悪役なのよね。
まあ、後に主人公がもっと腹黒女だって発覚するからOKなんだけど。
ていうかこのゲームって、クソみたいな選択肢しか出ないのよね。
せいぜい、ウチのクソ妹と婚約でもなんでもやってボロボロになっちまえばいいのですわ。
「いや。違う。実は私は、女だったのだ」
待て待て。そんなキャラいたっけ?
前世の記憶がございません。
そんなシナリオだっけ?
「隣国から王座を死守するため、キミにひどい仕打ちをしてしまった。すまない」
実はこの王子……つまり王女は、隣国の王子と結婚させるから引き渡せって言われていたんだって。
でも、姫は死んだことになっていた。
私と結婚した体にしておくほうが、隣国の条件を結ぶより有利なんだという。
で、王女様は王子として、ずっと性別を偽っていたとらしい。
てっきり、私が断るものだと思っていたという。
そうなれば、いさぎよく隣国の王子と結婚しようかなと考えていたのだ。
しかし、私は王子の好感度を最強まで高めてしまった。
おかげで王子は、私にべた惚れという状態。
結婚したはいいが、王子の性別は女だ。
仕方なく、婚約破棄と相成ったわけである。
「この世界って、同性婚はあり?」
「なしだ。世継ぎが生まれない以上、交際は認められない」
うーんどうするか。
国を立てておくなら、このまま性別を偽って過ごすしかない。
カミングアウトされたからはいさよならでは、国が滅びてしまう。
どうすっかなー。
私だけが追放なら、辺境で気楽に過ごすのだが。
「わかりました。では、建国しましょう!」
王女と国を作り、百合でも過ごせるハッピーキングダムを結成するのだ。
「おお。で、どうするので?」
「隣国は、妹に嫁がせます!」
まあ、隣国の王子もイケメンだし、妹はしたたかだし、なんとかなるっしょ。
女である王子に惚れても仕方ないからね。
「そんでもって妹か隣の国に我々を追放してもらって、流刑にしてもらえば、落ち着いた先で国をおこせばOKです」
「結構だ。しかしそれでは、我が国が滅んでしまうな」
「あとで我が国と同盟を結びましょう。それで解決します!」
国があるかどうかより、人望のある王女が健在かどうかのほうが重要になってくるだろう。
「わかった。そうしよう!」
こうして、私たちは晴れて追放となり、百合キングダムを結成したのだった。
しかし、イレギュラー要素が一つ。
妹と隣国の王子……に化けていた王女もついてきたのである。
お前らも女同士やったんかい!
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