女子だって、絶対領域が気になるっ ―pixivお題 『ハイソックス』より―
「な、何? トモ!?」
ユイナが、制服のスカートを押さえた。
「いやあ、今日も絶対領域が眩しいなと」
「おあいにくさま。下には黒のアンスコ穿いてるからね」
「いいよ。ハイソはロマンだから」
ユイナが「うええ」とうめく。
「ああ、どうして水色の制服には、白いハイソが似合うのだろう」
「トモ、発想がおっさんだよぉ。今に始まったわけじゃないけど」
いや、ちょっと待て。
ほかの生徒も、水色制服にハイソではないか。
かわいいが、制服が可愛いという感じである。
かくいうわたしも、黒ではあるがハイソである。
なのに、ユイナに比べてかわいくない。ちっとも。
身内逆びいきでもなんでもない。とにかく、普通だ。なんのセンサーも反応しない。
これは、あれだな。
「ユイナが特別にかわいいというわけだよ」
「うえええ。お弁当が出そう」
小さい身体を前のめりにして、ユイナがえずく。
「どうしてだ? かわいいと言われるのは不満?」
「視線がおっさんのヤツに言われると、生きる気力が削がれるよ」
「ダメダメ。強く生きて」
乳酸菌飲料を渡すと、ユイナの機嫌が治った。
「つまり、おっさんから奇異な目で見られるのは勘弁と?」
「うーん。ふつうのオッサンでも、トモみたいには考えないと思うなぁ」
「なんだと?」
私は、おっさん以下だったのか。
「そもそも白いハイソなんて、小学生以上はそうそう似合わないよ。アイドルくらいじゃない?」
「いや。ユイナはそのへんのアイドルすら凌駕する」
「買いかぶり過ぎだよ。お世辞でも怒るよ」
「ユイナはもっと、自分の魅力に自信を持って」
「やだぁ。目立ちたくない」
しかし、彼女の魔性は隠し通せない。
休憩時間になると、複数の女子がお菓子を恵んでくれる。
カゼで休んでいる時は、だいたい誰かがノートを取ってくれていた。
プリントを誰が持っていくかで、流血沙汰になったことだって。それは私だけだが。
とにかく、ユイナは同棲すらトリコにする魅了さを秘めているのである。
主に私を引き付けて離さない。
「そんな変な視線、イヤだなぁ」
「ユイナのような小動物的なかよわい生き物は、誰も放っておかない」
「小動物は、ハイソなんてはかないもん」
困った。
ユイナの愛情は、独占したい。
しかし、世間はそれを許さないだろう。
私のニーソに入れて、隠して持って帰りたいくらいだ。
「隠れる?」
ためしにハイソを脱ぎ、提案してみる。
またユイナから、「うええ」と言われた。
「せめて顔だけでも埋めて」
「芸人かっ!」
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