エスターと運命の1週間 ― Who’s that girl? - His seven crucial days in Los Angels ―
■#21 Day 7 Sunday Afternoon (1) ――7日目。日曜の午後 (1)――
■#21 Day 7 Sunday Afternoon (1) ――7日目。日曜の午後 (1)――
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アナと連絡が取れなくなってから、まる2日が経とうとしていた。
心配でたまらなくなったエスターが取った行動とは――。
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なんてこった、もう日曜の午後だぞ?
エスターは連絡のつかないアナが気になってどうにもならなくなっていた。もちろん何度も電話をかけたが、同じメッセージが流れるだけだ。いったい彼女はどこにいるんだ? どこに行ってしまったんだ?
最後に彼女を見たのは……大学の構内でマクドネル教授と寄り添って歩く姿だ。教授に話を聞きたかったが、今日は日曜で休みだし、自宅や電話番号は個人情報とやらで教えてくれないだろう。
いや……リンジーがいる! 彼女なら教授の電話番号を知っているかも。
すぐさまリンジーに電話をかけた。
「エスター?」はずんだ声が聞こえた。
「リンジー? 悪いけど、マクドネル教授に連絡を取りたいんだ。教授の電話番号を教えてもらえないかな?」
「え……? なんであなたが教授に?」困惑した声。落胆の色も隠せていない。
「大至急、聞きたいことがあって」
「でも個人情報だから、いまの時代、簡単に教えることはできないわ」
「頼むよ! 大事なことなんだ、事情はこんど説明するから」
リンジーはためらっていたが、しかたがないと思ったようだ。
「わかった、教えるわ。でもトラブルは起こさないでよ」
「わかってる。恩に着るよ」
リンジーから番号を聞いて電話を切ると、エスターはすぐに教授に電話をかけた。
呼び出し音5回。
「もしもし?」出た!
「あの、マクドネル教授ですか? ぼくはUCLA経営学科2年のエスター・ハートです。教授がご指導されているアナスタシア・シチェルヴァコヴァと金曜に会われたと思うのですが、その後、彼女がどこに行ったかご存じないでしょうか」
ハート家の小僧? なぜ彼がわたしに? しかもアナスタシアのことで?
「さあ、あいにく知らないね。金曜の指導が終わったらすぐに帰ったよ」とっさに口をついて出る。
すぐに帰った? キャンパスで寄り添って歩いていたのに?
「そうですか……連絡が取れないんです。寮にもいなくて。教授なら連絡先をご存じじゃないかと思って――」
「いや、知らないな。わたしだって彼女とのつきあいは浅いんだ、指導学生のひとりにすぎないんだからね」
「そうですか……お忙しいところすみませんでした」
エスターは電話を切った。金曜の指導後はすぐに帰ったなんて、どうしてうそをつくんだ? まあ、あのあとすぐに帰ったのかもしれないけど……。
まさか――やましいことがあるからなんだろうか?
もしかして、いまも彼女は教授といっしょにいるのか? だから電話に出ないのか?
そうだったら――ばかみたいだ――ぼくひとりでやきもきして。
彼女がどこにいるかだけでもわかれば……。
そう考えて、エスターははっとした。
そうだ! ぼくとしたことが――!
エスターはあわててスマホを操作した。
“キャット・コレクト”。アナのスマホに入れた、猫をあつめるゲーム。アナとぼくの“お城”は連携した。連携した相手のGPSは、電源オフになっていてもはたらくはず――。
“接続”のボタンをタップしたエスターは、固唾をのんで画面を見つめた。
頼む、頼む、つながってくれ――。
出た!
マップ上に点滅する“アニャ”猫の顔。
近い! 車で10分かかるか、かからないかだ。
エスターはコテージを飛び出し、レンジローバーを急発進させた。
***
まったく、驚かせやがって。
マクドネル教授はスマホをソファの座面にたたきつけた。
いつのまにアナスタシアがあのハート家の小僧と知り合いに――? このまえのパーティでリンジーにでも紹介されたのか? リンジーがほかの女を紹介するなど考えられないが……。
だが、だいじょうぶだ、落ち着け。
アナスタシアを連れてきたところはだれにも見られていないはずだ。
ここにいるのがバレるようなことは、なにもない。
うまい酒とつまみでも買ってこよう。
ゆっくりうまいものでも食べれば、すぐに気分はよくなる。
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