エスターと運命の1週間 ― Who’s that girl? - His seven crucial days in Los Angels ―
■#18 Day 5 Friday Morning ――5日目。金曜の朝――
■#18 Day 5 Friday Morning ――5日目。金曜の朝――
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アナは熱もさがって回復し、大学に登校する。
彼女から治験結果の再報告を受けた教授は――。
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3日ぶりの大学。
まだ少しふらつきはあるけど、熱はさがった。
エスターの車に乗せてもらって登校し、まずは寮に戻った。
部屋にはもちろん、なんの変化もなかった。
冷蔵庫のものが少し古くなって、パンに小さなカビがはえてたくらい。
服はエスターがきれいに洗濯してくれたし、持ち物も必須のノートパソコンとファイルケースはいつも持ち歩いているから、まるきり3日前と同じ格好だ。
エスターとは夕方にカフェテリアで待ち合わせることになっている。互いに大学での予定が終わったあと、いっしょに子猫を迎えにいくのだ。
そのことを考えると、すごく気持ちが明るくなる。
昼休み、アナは医科学研究所の建物になかなか入れずにいた。
ゆうべ教授に、報告をしにいきますとメッセージを送った。
そしたら教授の午前中の講義が終わるのを待って、会うことになったのだ。
わたしの判断は……変わっていない。2日以上ずっと考えていたけれど、ありのままの治験結果と分析を報告するという考えは変わらなかった。
朝から何度も報告書の中身を確認し、見直して、心を固めた。でも、いくら心は決まっていても、教授がどう反応するかと思うとやはり気が重い。
アナは勇気を奮い起こして建物に入り、マクドネル教授の研究室に向かった。
ドアの前で背筋を伸ばし、ノックする。
「どうぞ」
ごくりと息をのんで、なかに入った。
「アナスタシア」教授が顔をあげた。表情は……読めない。
「マクドネル教授」アナはデスクの前まで行った。
「で? 報告書は持ってきたのかね? メールには届いてないようだが」
「新しい報告書はありません。3日前にお送りしたものがすべてです。わたしの判断は変わりません」ひと息にいって、口を閉じた。
教授はゆっくりと顔をあげてアナの目を見すえた。開いていたノートパソコンのふたをぱたりと閉じる。「――UCLAで研究ができなくなっても?」教授の最後通牒だ。
「はい」アナがひるむことはなかった。
「そうか――とても残念だ」教授はデスクの中央の引き出しを開け、そこにあったものを取り出した。「こういうことはしたくなかったが」
アナが目をみはってあとずさる。
銃口がアナのほうを向いていた。
教授は銃口を向けたままゆっくりと立ち上がり、コートスタンドから薄手のコートを取った。自分の腕と銃を覆うようにコートをかけ、アナに近づいて突きつける。
「さあ、ここを出るんだ」
「出るって……どこへ?」
「外に決まってるだろう。さあ、ドアを開けて」
ぐいと銃口を押しつけられ、アナはじりじりとドアに近づき、震える手でハンドルをまわした。教授に押されるようにして廊下に出る。廊下を進み、階段をおりて、外へ――。
「このまま、まっすぐ」
「ど、どこへ……」
「いいから、いわれたとおりに歩け」
従うしかなかった。
傍から見れば、まるで寄り添って歩いているかのように見えるだろう。
まさにそういう状態のふたりを目撃したのは――エスターだった。
アナと教授?
あんなに寄り添って、まるで恋人同士みたいじゃないか――。
彼は目にした光景が信じられず、立ち尽くした。
熱がさがったとはいえ、今朝のアナはまだふらついていた。心配だから昼休みに様子をたしかめようと寮に行ったけど、いなかった。だから研究所のほうに来てみたのだ。
でも、こんなものを目にすることになるなんて――。
エスターは声をかけることなく、きびすを返した。
アナと教授はパーキングスペースまでやってきた。教授は数メートル離れたところからスマートキーで自分の車を解錠し、助手席のドアの前でアナを止まらせた。
「乗りなさい」
「……」どうしよう……どうすれば……。
「早く」
だめだ、逃げられない。アナは観念し、ドアを開けて車に乗った。教授がポケットからロープを取り出し、アナの両手を縛って、さらに体をシートにくくりつける。できるだけ外からロープが見えないようにアナに自分のコートをかけ、アナの荷物は後部座席に置いた。
「やめてください、教授、こんな――」
「黙れ」
運転席にまわって乗りこんだ教授は、すぐに車を発進させた。
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