第3話 クラスのみんなで自己紹介!

「はい! ではみなさん。このクラスを担当することになった、諏訪部友恵です。これからの1年間頑張っていきましょう! えい、えい、おー!」


「「おおー!!」」


 教壇のところに先生が立っていて、先生の返事にクラスの人たちが腕をうえにあげて答える。

 すでにここ、1年B組のクラスの仲は打ち解けていた。近くの人と色々話している。


 凄いな……どうしてこうもまあ、会ったばかりなのに話せるんだろう。俺に少し教えて欲しい。


 隣の席には犬倉さんがいて、みんなと一緒に腕をあげているようだった。

 楽しそうにしている。


「えっと……朝には少々ハプニングがありましたが……なんとかなりましたし、もう少し学校に余裕をもって登校してくださいね」


 先生が俺たちの方を見る。

 すかさず、クラスの一人が言った。


「先生、朝のハプニングってもしかして遅刻のことですか!?」


「そ、その通りです。今度から遅刻は厳禁ですからね。注意してくださいよそこの二人!」


「は、はい。気を付けます」


「すいません……」


 指を差される。周りは爆笑。

 そう、結局遅刻してこうなった。


 クラスは発表されていてたまたま偶然、犬倉さんと一緒だったのだ。

 教室の中に入ったらもうみんな座っていて、俺たちも席に着いて、この状況だ。

 ちなみに席は自由席で空いているのはここ2席しかなかった。


 遅れたのは……本当にすいませんでした……はい。


「まあ今回はまだ初日ということで不問としましょう。高校生なのでその辺は節度を持って行動しましょうね。次遅刻をしたらペナルティーを与えるかもなので気を付けるように」


 肩身が狭い……

 ていうかさっきからそこらへんで、入学式に遅刻するとかないわ(笑)みたいなこと言ってるやつ、マジで一発ぶん殴ってもいいかな? 一発くらいはいいよね!?


「色々言われてますね……」


「そうみたいんだな。ちょっと後で殴ろうかと思うんだけど、どう思う?」


「流石にそれは止めてくださいね!?」


「……冗談だよ」


「いまのトーン冗談に聞こえなかったんですけど本当にやらないでくださいね……」


「わかってるさ……」


 小声で犬倉さんと話す。

 ちょっと気が落ち着いてきた。

 いや、本気で殴るつもりはなかったけどね……


「……というわけで、色々と注意もすんだことですし、自己紹介でもしてもらおうかな。まだみなさんのこととか全然知らないですし。いいですよね」

 

「うわ……いきなり来た自己紹介……」


 クラスのやつらが一斉に面倒くさそうにしだす。

 俺はというと、非常に興奮していた。そして、物凄く緊張していた。

 なぜならば。


 ここでいいところを見せれば陽キャになれるチャンス! があるからだ。

 陽キャになれば、友達、彼女、青春がすべて手に入る天国行のコース。


 だが、逆をいうと変なことを言えばもう陽キャになるチャンスなんてひとかけらもない。あるのは地獄行のコースだけだ。

  

 なんとしてもここでいいところを見せて、友達とかいっぱい作るぞ!

 遅刻の件があるけど、それも色々含めて帳消しにできるかもしれない。

 そんなゴミみたいなレッテルぶっ壊してやるぜ!


 ……どんな風にしようかな。やっぱりクール系? いや俺には合わないな……

 なら、熱血系かな? それも俺に合わない……やべ、そんなこと考えてたらなんか胸がドキドキしてきた。


「では名前順から始めます。では浅見さんからどうぞ」


 すると、先生の言葉に次々に自己紹介が始まった。

 段々と流れていき、すぐに犬倉さんの番になる。

 名前の初めが、いなので結構早い。


「次は犬倉さん……でいいのかな?」


「はい、その読みで大丈夫です」


「なら、お願いします」


「はい、私の名前は犬倉咲と申します。あまり人と仲良くできるかわかりませんが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。あと、遅刻してごめんなさい!」


 一生懸命で恥ずかしそうに話す。

 凄く可愛かった……

 

 おお……と歓声が沸き起こる。


「可愛い……」


「めちゃ美人じゃん」


「なにあの子友達になりてぇ……」


「しかも律儀に謝っているところがまたかわえぇ……」


 結構いい反応だった。

 なんだ、遅刻のことなんかみんな気にしてないのか。

 ちょっと怖かったけど、どうにかなりそうだ。


 そして色々な人が過ぎ、俺の番がやってきた。


「では橋本君。自己紹介お願いします」


「は、はい……」


 き、緊張してきた……

 でも、やるしかない。

 ここでいい反応を見させてやる!


「……どうも橋本誠です。ゲームとか結構好きです。色んな事をやっていきたいと思うので是非、友達とかになってくれると嬉しいです……」


 言い終わり、席にそっと座った。


 よし、言えた。一応はちゃんと自己紹介を言えたぞ。

 反応はどうだ……

 周りを向く。


「なにアイツキモ」


「ウザそう……」


「友達いなそう」


「クソ陰キャが」


「ていうかアイツも遅れてたのになんで言わないんだよ。意味わかんねぇ……」


「あの美人の人と一緒に入って来たよな。余裕そうにしやがって、くそ……」


「〇ね」


 辛辣だった。


 ……しかも最後のは普通に暴言じゃねーか!?

 なんだよ、遅刻した同士のこの反応の差は!?

 こっちが意味わかんねーよ!?

 俺に謝れ!!

 

「うーん、ちょっと反応があれみたいだったかな。もう少し頑張っていきましょう……じゃあ次の人行ってみようか」


 先生、全然フォローになってないです。

 むしろ胸が痛いんですけど。

 

 はぁ……とため息をつく。

 

 俺の高校生活。無事終了しました。

 お疲れ様!

 

 ……涙が出てきそうだ。なにこれ。


「ねぇ……誠君。大丈夫です? 具合悪いんですか?」


「え? どうして……」


 犬倉さんが声をかけて来る。

 

「ちょっと辛そうな顔をしていたから。どうしたのかなって思いまして……」


「……そうなのか、別に大丈夫だ。ありがと……」


「大丈夫ならいいですけど……」


 心配してくれたらしい。

 ありがとう。本当にありがとう。

 マジで優しい、この少女。助けてよかったと心から思うね。


「なにかあったらいつでも声、かけてくださいね!」

 

 ニコッと笑う。


 今更だけど、こんな子と仲良くしているって俺って結構凄いのでは……

  


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る