美鈴編2
寂しそうな表情をうかべている美鈴。
色味が消え、まるで消えてなくなりそうだった。
学校では元気な姿とは違う。別人みたいだ。
まー俺には関係ないんだが。
無視して本屋に入ろうとした。
「ねえ、優季君あなたはそれでも男?」
「はい?」
「普通落ち込んでそうな女の子見たら普通男から声かけるのよ!」
まじでめんどくさい。
「あ、ごめんね。用事あるから。」
「いいから駅まで送ってよ。」
「なんで送らないといけねえんだよ。めんどくせー。そもそも俺はお前苦手なんだよ。」
「いいじゃない!減るもんじゃないし!」
「嫌だったら嫌だ。」
「…お願いだから送ってよ。」
彼女を見ると目が真っ赤。やっちまった。言いすぎた。
「…後ろ乗れよ。」
・・・
無言のまま駅に向かう。
すすり泣く声が後ろから聞こえる。
気が利くやつなら何かしら声をかけていただろう。
でもその時の俺は何も言ってやれなかった。
冷たい風が頬に突き刺さる。
時間としてはあっという間だが、こんな時は無駄に駅まで遠く感じるものだ。
駅につくなり、
「ありがとーね!助かったわー。」
と甘ったるい、いつものテンションに戻った美鈴。
「…なんか悪かったな。」
「とりまありがとう!」
そう言って電車に向かって走っていった。
いったいなんだったんだ。あいつなんかあったのか。男絡みか。
美鈴のことばかり考えているうちに家に着いた。
…あ、やっちまった。
バドマガ買い忘れてしまった。
・・・
「ったく昨日のはなんだったんだよ。」
なぜか彼女の寂しそうな顔が頭から離れなかった。
「昨日ってなによ。」
綾香が俺の独り言を聞いていた。
「いや、なんでもない。バドがうまくいかないのよ。」
「優季嘘下手だねー。何年の付き合いだと思ってるのよ。」
「うるせー。ほっとけ」
図星で腹が立つ。
「…昨日死にそうな顔した美鈴が本屋にいたんだ。」
「あー…。」
無言になる綾香。せめてなにか言ってくれ。
「男なら察しなさいよ。」
「あいつのプライベートなんか知るわけないだろ。ま、フラれたんだろ。それくらい俺にも分かる。」
「さすが私にフラれただけあるわね。」
「お前むかつくな。去年のはもうなしだ。過去の俺をボコりたい。」
「怖いわー笑。ま、美鈴にとってはよかったのよ。有馬先輩評判悪かったしね。」
「よりによってあの先輩か…」
女癖が悪いことで評判の先輩だ。なんて男運ないやつなんだ。
「うまく言えないけど強がってるだけで美鈴もつらいはずよ。部活中も変だし。」
「つーか、助けてやれよ。お前同じ部活なんだろ?」
「言われなくてもやってるわよ。でも実際フラれた時は同性が何言っても響きはしないのよ。」
「そんなもんか?」
「そんなもんよ。美鈴がどうにかするしかないの。」
なんだか冷たいなと思いつつ、だからといって自分もやれることはないと思った。
・・・
その日もいつものように部活。やはり心に引っ掛かりがあると、普段よりも拍車をかけてプレーが雑になる。
「優季、集中しろ!試合前だぞ!」
監督に厳しく指導される。もちろん集中できない理由は言えない。
「くそ、むかつく!」
帰り際に自転車小屋の壁にイライラをぶつける。
そんなもやもやを抱えたまま校門を出ると、その先にテニス部の練習を終えた美鈴とばったり会ってしまった。
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