第24話 ゆっくりはしてられないかもしれない
菊花の家に泊まった翌日、俺は恥ずかしさのあまり朝に帰る予定だったところを家には帰らずにうろうろしていた。なんとなくこのまま帰ると昨日の配信の話になりそうだし、ごまかすためにちょっと遅い時間に帰ろうと思った。俺自身の気持ちを落ち着けたいのもある。
「どこ行こっかな~」
愛衣羽の家に住むようになってまだまだ時間が経っていないからこの辺りの地理に詳しくない俺は適当に歩き回って気になったとこに行ってみようという考えだ。
あっ、あの店期間限定のハンバーガーあるな。食べてみよ。
「卵うんま」
ハンバーガーを持ち帰りで食べながら時間を潰せそうな店を探す。でも一人で入れそうな場所がなかなか見当たらない。今日の一日時間潰すくらいどうにでもなると思ったがスーパーとか本屋とか、一人で入りやすくてもあまり長時間いるような場所じゃない。仕方なくスマホを開いてこの辺の地図を見る。近くに映画館があるからそこに行くことにした。
「結構面白かったな」
時間的に海外の映画しかすぐ見れそうなのが無かったので見ることにしたが。案外楽しい時間だった。まさかヒロインが男で同性愛者だったなんてな。それでも問題なく一緒になるところに時代を感じる。昔なら絶対喧嘩とかになってただろうな。
またこんど愛衣羽とも行きたいな。
そんなことを考えている内にそろそろ帰って愛衣羽の顔が見たくなってきた。もう夕方だしそろそろ帰らないと心配させそうだ。
「野乃羽、こっちだ」
「は?」
駅に向かって歩いていた時にいきなり腕をつかまれた。そのまま引っ張られた。抵抗しても力でまける。俺が今まで力負けしたことある相手なんてほぼいない。だからこの状況はすげえまずい。このままどっか連れ込まれる可能性がある。
「おい、何すん……」
「静かにしろ、気付かれる」
俺の腕を掴んでいたのは美緒だった。どおりで力負けするはずだ。だけど何で美緒がここにいて何で俺の腕を引っ張ってるかが分からず聞こうと思った。だが美緒は俺の方を見ておらず駅にいる誰かを確認しているようだった。
気になって美緒が見ている場所を見るとそこには俺の母がいた。
「おい、何であいつがここにいるんだよ」
「今日また野乃羽を探しに店まで来たんだ。詳しいことは後で話す。とりあえず俺の車まで行くぞ」
「おう、分かった」
俺は母に気付かれないか何度か確認しながら美緒の後を追った。今日は家に帰れないかもしれない。愛衣羽には連絡しとかないとな。
これ以上あいつが俺らに関わろうとするなら俺がどうにかしないといけない。これ以上愛衣羽に心配かけたくないしな。
元不良の半バーチャルライフ 瀬戸 出雲 @nyan0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。元不良の半バーチャルライフの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます