元不良の半バーチャルライフ

第23話 衣装決定

「はは……冗談だろ」

　画面の中では愛衣羽が衣装を次々と紹介している。チャイナドレスに始まってメイド喫茶で働いているという人から送られたメイド服の写真、俺はよく知らないが有名らしいコスプレイヤーがコスプレをしている写真など。どれも着ることを想像しただけでも恥ずかしい衣装だらけだ。

「なあ菊花。愛衣羽は本当に俺にこんな服着せるつもりなのか？」

「そうだと思います。最初にこの話を聞いた時からやる気に満ち溢れていましたから。この前服を買った時に写真を撮ったそうじゃないですか。そこから思いついたそうです」

「そっからかあ」

　何であれからこうなるんだ。服の趣向が全く違うじゃねえか。写真撮る方にいくなら全く問題ないんだがこうなるのは、何だかな。結局写真も撮られそうな気がするし。そうなったら黒歴史どころじゃねえぞ。

「くそっ、こんなのやめさせないと」

「させませんよ！」

　俺が愛衣羽を止めるためにスマホをとろうとすると菊花が俺より先に俺のスマホを取って自分の後ろに隠した。

「何してんだ返せよ」

「菊花は事前に愛衣羽ちゃんに買収されているのです。先輩の寝顔写真にかけて愛衣羽ちゃんの邪魔はさせられません」

「そんなのいつの間に？」

　と思ったが愛衣羽が俺の寝顔を撮る機会なんていつでもあったな。だから俺の知らぬ間に渡されててもおかしくは無い。納得は出来ねえけどな。

　俺はスマホと取り返すために手を伸ばすがなかなか取り返せない。菊花は俺と比べて背が小さいが躱し方が上手く手を伸ばしても全て躱される。

『次はLAIママからの応募よ』

：おっ

：きちゃ

：露出度高そう

：BANまで棒読み

：さすがにそこまでやらんだろ

：わくわく

「ほら、菊花の番ですよ！」

「んあ？」

　愛衣羽の配信では菊花の提案した衣装が紹介されるみたいだ。俺もいったん止まって画面の方を見る。

『LAIママの提案してくれ対象はこれね。じゃーん。バニーガール♡』

：まさかのイラスト完成済み

：LAIママちゃんと着ろよ！

：生写真見たかった

「お前やりやがったな」

「えへへ」

　菊花は照れたように目をそらした。褒めてねえからそんな顔すんなよ。

『しかもこれ表情差分ももらっているのよ』

：照れ顔だと

：かわいい

：えっ……ろ

「う、うわあああ！　あっ」

「きゃあ」

　俺は恥ずかしくなって菊花のスマホに手を伸ばしたところ滑ってそのまま菊花に倒れこんでしまった。

「あっ、野乃羽先輩のお顔が菊花の胸に。ありがとうございます」

「悪い菊花。大丈夫か？」

「あっ……はい。大丈夫です」

　俺は菊花が怪我していないか確認する。どこも怪我して無いようで良かった。

『これで全部ね。じゃあアンケートで一番を決めるとするかしら』

　そろそろ愛衣羽の配信も終盤らしく全ての衣装が紹介されてしまったみたいだ。今更止めようとしてももう手遅れだ。

：一択

：こんなん決まってんじゃん

：チャイナドレスも良かったけど

：もはやこうなることあいも分かってただろ

『投票終了。一位はバニーガールで決まりね』

　結局一番恥ずかしい服で決まっちまった。

「もう帰るのやめようかな」

　帰らなければあれ着なくて済むし。

「それでもいいですよ。菊花が一生養いますから」

うるせぇ