第22話 コスプレ大会
『こんあい。人形あいよ』
:こんあい
:のんは?
:姉御いない
:一人じゃん
「始まりましたよー!」
「分かった、今行く」
『今日は姉さんがLAIのところに行っているからソロよ』
俺は二人分のカクテルを持ってキッチンからリビングに向かう。そしてその先で俺を呼んでいる菊花にグラスを一杯渡すと俺もソファに座った。
「乾杯ですっ」
「乾杯」
俺は今日菊花の家に来ている。目的は特にない。菊花に会いたいと言われて俺も久々に会いに行こうと思って来ただけだ。3Dの話でまだ俺のやることは無いらしい。せっかくだから泊まることになって今は愛衣羽が配信をするから一緒に見ようとしているところだった。ついでに俺の酒が飲みたいと菊花にお願いされたからカクテルを作った。
:そっかあ
:寂しい
:でも久々にソロも嬉しい
:言うほど久々でもないけどな
コメントでは俺が居なくて寂しいという声もあるが愛衣羽のソロを喜んでいる人の方が多いように見える。元々は愛衣羽のチャンネルだし当然だ。
「菊花は俺が居なくなってから何してたんだ?」
「そうですね。愛衣羽ちゃんから野乃羽先輩が居なくなったって聞いた時に愛衣羽ちゃんは野乃羽先輩が戻ってこられる場所を作るって言っていたのです。安心して戻れる場所があったら野乃羽先輩は必ず戻ってくるって信じて」
「そっか。てっきり少しは探してるかと思ったんだがな」
「最初は探そうとしたんですが先輩のご両親に止められたんです。家の問題だから手を出すな。愛衣羽は勉強しなさいって」
あの親の言いそうなことだな。結局俺はあの時にはもう捨てられたも同然の状態なんだろう。
「だから愛衣羽ちゃんがVTuberやるって聞いた時に野乃羽先輩のイラストも描き始めたんです。これも戻ってきたときの居場所づくりの一つかなと思って」
「そうか、ありがとな」
俺が戻ってきたときの事を菊花はずっと考えてくれていたのか。あのイラストも趣味だけで描いたわけじゃ無かったんだな。
俺はカクテルを飲みながら愛衣羽の配信に耳を傾けた。丁度オープニングトークが終わったみたいだ。
『ということで今日は前から募集していたリスナーコスプレ大会を開催するわ。募集内容は事前に言った通り姉さんに似合う、もしくは着せたいコスプレね。優勝したコスプレは実際に私が同じのを買って姉さんに着せるわ。それじゃあスタート』
「菊花。この話知ってたか?」
「はい! 野乃羽先輩に隠れて募集していましたね。菊花も参加していますよ」
こいつらッツ。
「馬鹿野郎おおおおおお! 言えよおおおおおお!」
「せ、先輩。苦しい……」
マジでこんなことしてたのかよ! しかも最後に残ったやつは俺が着るだと? 着るわけねえだろ! 着ねえからな!
「あ、悪い菊花。やり過ぎた」
「けほっ、いえ。ちょっと気持ち良かったので大丈夫です」
菊花の声がちょっと小さくて聞き取れなかったけど大丈夫みたいだ。良かった。
それよりリスナーがどんな衣装を送ったのか見なきゃな。ものによっては着てやってもいいかもしれない。
『最初のコスプレはこれ。チャイナドレスね』
:おお
:えっろ
:いいね
;かわいい
だ、
「だれが着るかぼけええええええ!!」
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