第21話 お風呂

 偶然できた空き時間に何をするか妹の愛衣羽に相談したところ、愛衣羽から返ってきた答えは空き時間とは全く関係ない野乃羽と一緒に風呂に入りたいというものだった。

 

 愛衣羽は俺をせかしながら食器の片付けをする。そのまま俺が食べ終わるとその片付けまでして俺を脱衣所まで引っ張っていった。


「何でそんな急いでんだよ」

「だってお風呂よ? 姉妹なら入ったことがあるはずなのに私達にはそんな思い出無いじゃない。だから楽しみなのよ」


 確かにそうだな。そう言われると俺もちょっと愛衣羽と入りたくなる。でもな


「ここの風呂二人一緒に入れる大きさじゃ無いだろ」

「そんなこと気にしない! さ、行くわよ」


 いつの間にか脱ぎ終わっていた愛衣羽。俺も脱ごうとするといつの間にか俺も裸になっていた。俺の服は愛衣羽が洗濯機に入れているところだった。いつの間に!?


「ほら、姉さん洗って!」


 愛衣羽はバスチェアに座ると俺にシャンプーを渡してきた。

 まったく、甘えん坊め。


 俺は愛衣羽の髪を丁寧に洗う。俺とは違って綺麗な髪だ。使ってるシャンプーが高いやつだからそのおかげなんだろう。俺もこっち来てから同じの使ってるしそのうち同じような感じになるのかな。


「姉さん思ったより上手ね。人の髪洗うことなんてなかったでしょうに」

「葉月とはたまに一緒に入ってたんだよ。あいつは俺の事甘やかすのが趣味だと店でも言ってるくらいだったしな」

「なるほど、本当に親子みたいな話ばかり出てくるのね。私も葉月さんの娘になろうかしら?」

「だから葉月とはそんな年齢差じゃねえんだよ。姉っつった方が通るぞ」


 葉月は愛衣羽と比べても4歳差くらいだろ。それで親子なんて言えねえよ。

 

 愛衣羽は俺に髪どころか全身洗わせてきた。こうして洗いながら愛衣羽の全身を触ると本当に成長したんだなということが分かる。だけど胸の大きさは俺の勝ちだ。姉としての威厳は保ったな。


「ありがとう。じゃあ交代ね」


 今度は俺が洗われる番だ。愛衣羽は丁寧に俺の髪を洗ってくれる。


「愛衣羽も上手いじゃねえか」

「ありがとう。私は人の髪洗う経験はほとんどないから緊張してたけど、それならよかったわ」


 愛衣羽は俺の髪を洗い終わると体を洗いだした。それと同時に俺に抱き着いてくる。


「愛衣羽?」

「いいでしょ。少し甘えさせて」


 しょうがないな。洗う手も止まりそうだけど許してやるか。昔っから甘えたがりなとこもあったけどほとんど誰にも甘えられなかったからな。むしろ今日まで甘えてなかったのは我慢してたんだろう。

 俺はしばらく愛衣羽の頭を撫でていた。


「へくちっ」

「すっかり冷えちまったな早くあったまろうぜ」

「ええ、そうね」


 愛衣羽は浴槽の中でも俺の胸に顔をうずめて抱き着いていた。

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