第20話 いつの間に
誤解が解けた後、俺は飯を食いながら愛衣羽に説明を求めていた。
「いつの間にそんなことになってんだよ、3Dの準備なんて時間かかるもんだって聞いてたから何の準備もできていないぞ! 心の準備もな!」
「私もこんな早い予定じゃなかったわ。宇井先輩が全部勝手にやってたのよ。本当に私もびっくりしたわ……」
「は?」
詳しく聞いた所、俺がデビューする前から菊花の趣味で俺のアバターの3Dが勝手に作られていたらしい。俺は改めて菊花のおかしさを感じると同時に、何故そんな技術力があるのか不思議な気持ちになった。詳しくは分からねえけど趣味の域を完全に出てるだろ。
つまり愛衣羽は今日いきなりそのことを聞かされてその対応や状況確認に追われていたということだ。そりゃいきなり予定が変わるとなると焦ることもあるよなあ。
「そもそも3Dを作るって話をした時は何も言わなかったくせに今日になっていきなり言ってくるのが一番頭に来たわ。なにが『趣味でこんなことしてるって言うのが恥ずかしかったんですぅ……』よ。おかげでこっちの予定は狂いっぱなしだわ」
愛衣羽は菊花への不満を隠すことなく晩飯のハンバーグをほおばっている。飲み込んだ後も少し頬が膨らんでいるのが少し可愛いけど、結構しっかり怒っているみたいだな。
「まぁ、遅くなるよりは良かったんじゃないのか?」
「そうだけど、結局早く終わったところで姉さんの準備が何もできていないし、今後の予定が早まるわけでは無いのよ。実際損は無いし多少は得になっているわよ。でも、くだらない理由で報告が遅れるのだけはゴメンよ。こっちはまだ制作途中の想定で予定を組んでいるんですもの。」
愛衣羽はハンバーグを飲み込んだ後喋り出しまた喋り終わると人参を口に入れた。葉月と違って行儀がいい。葉月との飯になれた俺もつられてマナーに気を使おうと思わせられる。
「それの何が問題なんだ?」
「中途半端に空き時間ができてもそこに予定が埋めづらいのよ。他の予定との兼ね合いも考えているからなおさらね」
「あーなるほど」
確かに中途半端に空き時間があってもその時間の使い方って難しいよなあ。長いようで短かったりして結局空き時間を潰す感じになるだけだ。
「そうだな、その時間でなんか愛衣羽がやりたいこととか無いのか?」
「今日いきなり言われた話だから、まだ何も考えてないわ」
「何かあったら言えよ。俺も暇なんだろうし、何でも付き合ってやるよ」
ここにきてから姉らしいこと何もできてないなと思っていたからこれは良いチャンスだと思う。いきなり押しかけて住まわせてもらって今では仕事まで用意してもらっている。今の状況では愛衣羽は完全に俺の保護者だ。迷惑かけてばっかで申し訳ないというのもあるし、せっかくできた時間で愛衣羽に何かできたらいいなと思う。
「今、何でもするって言ったわよね?」
「おう! どこにでもついていくぞ」
愛衣羽の好みを知るいい機会でもあるし、俺も楽しみだな。空き時間を使っての事だからそこまで愛衣羽を満足させられるかは分からない。せいぜいカラオケとかショッピングとかカフェにいくとかそんなもんだろう。でも愛衣羽も俺と遊びに行きたいって言ってたし、頑張って愛衣羽を笑顔にするくらいはして見せるさ。
「じゃあ、今から私と一緒にお風呂に入りましょう」
「おう、いい……ん?」
え?何で、風呂?
「おい、空き時間埋めるって話じゃなかったか?」
「いいの! そんなことよりご飯食べちゃって! 早く!」
「えぇ……」
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