第18話 #妹が引きこもった
「あー、あー。どうだ? ちゃんと聞こえてるか?」
俺は配信の設定ができているか不安で視聴者に聞いてみる。配信者は自分の視聴者の事をリスナーというらしいんだが俺には慣れない。リスナーはファンとは違うみたいだし視聴者ってまとめて言った方が楽でいい。
:聞こえてる
:大丈夫よー
:あれ?今日一人?
「そうなんだよ。一人で配信始めると設定が合ってるか不安でな」
配信準備を最初から全部一人でやるのは思ったより緊張した。間違って映しちゃいけないものを画面に出してしまったら俺だけの問題じゃなく愛衣羽に迷惑がかかる。というか愛衣羽の負担の方が大きいだろう。だから失敗するわけにはいかなかった。
さて、なぜ俺が一人で配信しているのか。愛衣羽は何をしているのかというと。
「なんかうちに帰ってきたら愛衣羽が部屋に引きこもって出てこなくなっちまった」
ってことだ。
:は?
:草
:何歳だよ
:引きこもりww
:なにがあったというのだ
俺が葉月と別れて帰った後、家に帰ってきた俺は拗ねていた愛衣羽の機嫌を取ろうと愛衣羽の部屋に向かった。だが愛衣派の部屋には鍵がかかっていて、呼びかけても返事が無い。何かあったのかと心配になり電話をしようと思いスマホを見たら通知が来ていた。
『今日の配信は一人でよろしく』
「え? 嘘だろ? おい!」
俺はてんぱってドアを再度叩くが結果は変わらなかった。
俺は遊びに行った話は軽く触れつつ愛衣羽が拗ねた経緯を皆に話した。
「てことなんだよ。なあ、どうすれば俺の妹は部屋から出てくると思う? 今日の配信何やればいいか分かんないからあいを部屋から出す配信にするわ。つーことで何か案くれ」
:草
:ちょっとおもしろそう
:リアル姉妹百合の波動を感じて萌えるんだ
:扉破壊しようぜ
:↑じゃあお前なおせよ?
「まともな方法で頼むな?」
流石にこの家俺が金払ってるわけじゃないし破壊系はだめだ。何とかして愛衣羽から出て来てもらわないと。
:扉の前で土下座謝罪配信
:お菓子で釣ろう
:金で釣ろう
:ご飯で釣ろう
:体で釣ろう
コメント欄には愛衣羽を部屋から出す方法が挙げられていく。視聴者の中では何かで釣ろうという意見が沢山流れていく。愛衣羽はもので釣れると視聴者に思われているみたいだな。本当にそれでいいのか? でも今の愛衣羽については俺より視聴者の方が詳しいかもしれない。俺が愛衣羽のもとに来てからそんなに時間がかかってないし愛衣羽の活動歴は長そうだしな。そう考えると少し寂しいな。俺視聴者に負けるのか。でも最後のよりは愛衣羽の事分かっていると思う。俺の体とか使えないだろ、女だし。
「もので釣るって意見が多いし、ちょっとやってみるか。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます