第16話 gorilla×gorilla

「こういうとこ初めて来るな」


 階段を上り奥のトレーニングルームを覗きながらぼやく。もしかしたらゲーセン行くかなと思ったけどそんなことは無かった。奥では何人かの人がトレーニングしている姿が見える。なんとなく筋トレ用の器具は知っているけどどうやって使うか知らないなあ。それは葉月に聞けばいいけど。


「え? そうなのか? この前力強かったからこういうとこで鍛えてんのかと思ってたわ」

「環境的に鍛えられたんだよ」


 子供の頃は親に何でもさせられたし、美緒のところでも変なことに振り回されてその中で鍛えられることが多かったからな。そういえば愛衣羽は筋肉ないな。その代わり勉強とかは俺より強いしそっち方面で育てられたんだろうな。

 俺は葉月に連れられなかに入っていく。面倒な手続きはほとんど葉月が手伝ってくれたから楽に終わった。


「お、あれ知ってるぞ、ベンチプレスってやつだろ」

「ここに初めて来る奴って皆最初それに飛びつくよなあ。手前にあるし知名度高いからとりあえずやってみようって感じなのかね」

「なぁ、やり方教えてくれよ」

「分かった、とりあえず座りな」


 葉月から丁寧に教えてもらいながらベンチプレスの準備をする。思ったより姿勢とか気を付けることが多くて勉強になる。一通り教えてもらって高さの調節もやってもらった。これ一人で来てたらここまでしっかりできなかったから有難いな。


「ほら、こんな感じだ。やってみろ」

「おぅ……らあ!」


 俺は葉月に教えてもらった通りにベンチプレスをする。腕の筋肉だけじゃなくて腹筋とかにも力を入れる。結構いいトレーニングになりそうだ。よくできてんな。てかこれ


「え? 軽っ」

「それはそうだろ、軽めの奴だし」

「なんだよ、結構気合い入れてたのに」

「いきなり重いのやって怪我したらどうすんだよ」


 それはそうか、いきなり重いもん持って落としたらあぶねえしトレーニングにもならねえしな。そう考えている内に葉月はさっきのより重さを重くした。このまま少しずつ重くしていって俺に合った重さを探るらしい。


「これでも軽そうだな。これ男でもきついやつがいるってのに、すげえな」

「え? これそんな重い奴なのか?」


 元々力が強いのは自覚があったけど限界は知らないな。だからこれはいい機会なのかもな。やれっるとこまでやってみよう。


「ふんぐぐぐ……おらぁ!」

「おーこの辺りがきつくなってくる所か、やっと止まったな」


 段々重くしていくと思ったのに途中で急に重くなった。なにをしたんだ? 急に重さが変わるようなものを付けられた記憶も無いんだが。


「っておい! 手で押さえてんじゃねえか!」


 驚いて力が抜けたところを葉月は棒を片手で持ち上げる。こいつの力もおかしくねえか?


「もうこのジムにあるものの中で一番重い奴を持ち上げられたらこうするしかねえだろお前の限界を知りたかったんだ」


 だからって上から抑えんなよ、びっくりして力緩めた時終わったって思ったぞ。


「これじゃここで鍛える意味ねーな」

「は? じゃあ来た意味ねーじゃん。葉月はどれくらいできんだよ」

「俺も同じで全部軽く上がるぞ」

「じゃあお前も意味ねーじゃん!」

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