第15話 葉月とお出かけ

 今日は愛衣羽の家に来てから初めて愛衣羽と離れて行動している。家をでるまで愛衣羽は大分拗ねていた。帰ったら機嫌を取ってやらねえといけねえなと思う。次の配信はそれかな。


 その話は置いておいて、今日はこの前服を買いに行ったときに知り合った葉月と遊ぶことになっている。あの日、モデルの代わりとして撮影を手伝ったあと色々あって仲良くなった俺たちはその後もやり取りは続けていて、今日葉月が休みだったから二人でどこかに行こうということになっていた。愛衣羽に一緒に行くか聞いたが、VTuber活動のための作業をこの機会にやっておくと言われたので愛衣羽は一緒には来ないことになった。

 そんな感じで一人で家を出て見慣れない街をスマホの地図アプリを頼りに進む。ナビがあるから初めての町でも迷わずに行けるのは助かる。遅刻なんかするわけにいかないもんな。


「おーい! 野乃羽、こっちだ」


 集合場所に着いたなと思ったら、左から俺を呼ぶ声が聞こえてきた。そっちを向くと葉月が手を振っていた。葉月はガタイがいいから見つけやすいだろうと思っていたけど、そういや俺も身長高いから見つけやすかったな。


「よう、待たせたな」

「おう、ニ十分くらいか?」

「そ、そうか」


 時間まで言うなよ……。待たせた俺が悪いんだけどまだ集合時間十五分前だぞ? どれだけ早く着いたんだよ。


「はっはっは。悪りィな、冗談だ。五分も待ってねえよ」

「はぁ!? ったく、冗談きついぜ」


 こいつこんな冗談言うのかよ、マジでビビったわ。ただ俺が申し訳なくなっただけじゃねえか。冗談ってそんなもんだろうけどよ。


「悪かったって。行くぞ」


 そう言って葉月は歩き出した。いつも誰かを引っ張ることを望まれてきた俺には誰かに引っ張ってもらうのは珍しいことだな。それこそ美緒くらいだ。

 今日の予定は全て葉月が立てているから俺には向かう場所が分からない。だから葉月に引っ張られるのは当たり前のことだけど、なんか変な感じがするな。そのまま葉月の後を追っていると周りからの視線を感じる。俺は昔からそうだったけど、葉月もガタイがいいからやっぱ目立つなー。

 後ろから見てても肩甲骨やら腕の筋肉やらいろいろ目につく。この前の時はゆったりとした服で目立たなかったし何より自分の事でいっぱいいっぱいで気にして無かったからな。

 今日は葉月の趣味に誘われている。何するかは聞いてないけどこんな筋肉だし筋トレは趣味だろうけど今日は初めて一緒に遊ぶのに選ぶ場所じゃないよなあ。


「着いたぜ、ここだよ」


 一階はゲーセン。上は……トレーニングジムかぁ。

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