第14話 #でれた
「き、気持ち悪い……」
菊花の言ったことに対して放った愛衣羽の言葉が菊花の心を容赦なくえぐる。そして、心をえぐった本人はそのことを気にせず配信を続けていくみたいだ。
「その話は置いておいてまずはなんで姉さんの新衣装がこんなに早いかということね。そのためにLAIを呼んだのよ」
:そうそうそれよ
:流石に早すぎ
;絶対デビュー前にできてたでしょ
:↑俺もそんな希ガス
:で、どうなん?
「そうだよ、新衣装ってそんな簡単にできるものじゃないんだろ? 俺もそんな話聞いてなかったぞ」
俺だって他のVTuberを見だして少しは勉強している。新衣装がそうポンポンとできるものじゃないことも分かっている。なのに愛衣羽が見せてくれた衣装には何種類もの俺の衣装があった。あれは俺のデビューが決まってから作れる量じゃない。
「それについてはLAIから説明させていだきます! ズバリ! あい様がデビューされるときから姉さまの分もいくつか勝手に作らせていただいていたのです。のん様のデビューが決まる前に!」
なんだそれ、俺のデビュー関係なしに俺のアバターが完成されていたってことかよ。俺のデビュー決まった時にもうイラストがあったのはそういうことだったんだな。
「何だ? 元々俺がデビューすることも想定していたのか?」
「いえ。LAIの趣味です」
:は?
:趣味で何作っとんねん
:デビューとか新衣装とか結構大事にされるはずなのに雑
:まさか姉御の意見なしで作られてるとか
コメントの言うとおりだよな。俺だって自分の衣装自分で考えてみたかったのに。これからも菊花の趣味全開の衣装かよ。
「そんな話は良いのです。さっさとのん様の新しい姿をお披露目いたしましょう」
「そうね、そうしましょうか」
「軽いな、おい」
もうなんか分からなくなってきた。今日の配信はLAIにテンポをとられっぱなしだし、もうこのままでいいんじゃないかと思えてくる。流石に三人で配信となると一人ぐらい大人しくても騒ぐ奴が居れば大丈夫だろ。俺は自分を画面から外して新衣装に変える。
:てきとうだなぁ
:ほんと軽い
:お、ついにか
:楽しみ
:うおおおおおお
新衣装に変え終わり、画面に出す準備が完了する。ここで俺は愛衣羽に決められたセリフを言うことになる。
「いくぜ、……に、にゃ~ん」
ちょっと恥ずかしがっちまったがそのまま俺の姿を画面に乗せる。赤い髪はそのままだが、その頭の上から獣の耳が生えていて、背中からは尻尾が出ている。
:ねこだああああああ
:よっしゃあああああ
:かっこいい
:気高い
:恥ずかしがっているのは可愛いな
「勝ったあああああああ!!!!!!」
「うるさいわよ」
びっくりした、いきなり菊花が騒ぎ出したから何事かと思った。菊花も長く会わないうちに本当に変わったな。本当に何があったのか気になるところだ。
「すみません。あまりにもかっこかわいすぎたもので……」
かっこいいのか可愛いのかどっちだよって言いたいけど、可愛いって久々に言われたな。ちょっと嬉しいかも。
「あ、ありがとな」
「!? ね、姉さんがデレた!」
「ふわああ。かわいいいいいいい」
「お、お前らうるせえ!」
結局そのまま配信は最後まで菊花に振り回されながらスクショタイムをとった後終了した。最後に
「ちなみに姉さんの3Dモデルも製作開始しているわ。こっちも早すぎると言われるかもしれないけれど最近噂の個人配信が可能なVRMMOの発売が発表される頃には間に合わせたいわね」
という俺も初耳の言葉を残して。
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「なあ、菊花っていつからあんな感じなんだ? 昔はもっと大人しかっただろ」
「あの頃からあんな感じよ。隠していただけ」
「マジかよ、じゃあ愛衣羽を様付けで呼ぶのは何でだ?」
「姉さんの好みとか私に聞いてくるから教えるついでに躾けたのよ」
「マジかよ……」
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