第13話 #いきなり新衣装
「こんあいー人形愛とー」
「人形のんだ」
夜になって俺と愛衣羽は配信をしていた。とりあえず美緒の話は置いておいて、今やりたいことをやろうということになった。言い換えると現実逃避ともいう。そして今回やるのは。
「いきなりだけど、今日は姉さんの新衣装を発表しまーす!」
:おお!
:早い
:初配信から一週間たってなくない?
「そう! 普通のVTuberなら新衣装お披露目なんてデビューしてから大分時間がかかってからやること。でも姉さんは違う! なぜならイラスト担当が姉さんガチ恋勢だから!」
「テンション高いなぁ」
愛衣羽が見たこと無いくらいにはしゃいでいる。配信初めていきなりこうなったからびっくりした。びっくりし過ぎて逆に俺が落ち着いちまった。愛衣羽から大事な配信って聞いていて、ちょっと緊張していたから助かったけどよ。
「違うわよ姉さん。今日呼んでるやつがいつものテンションでついていけない相手だからよ」
そっちかよ。一応年上なんだし敬意ぐらい示してやれよ。
俺の横で愛衣羽は不満そうな顔を隠さないまま配信を続ける。正直こんな態度で配信をしていいのか分からないけれど俺はこのVTuberについて知ったのもつい最近のことだしそういうことについては愛衣羽のほうがよく知っているのだろう。
「ということで呼ぶだけ呼ぶわ。来なさい」
ほんと乱暴だな。マジでいいのか?
「はいっ! こんにちは。イラストレーターのLAIです。のん様お久しぶりです!」
「お、おう」
こいつもこいつで勢い凄いな。もう俺のお披露目なのにこいつらが主役みたいになりそうだな。別にいいけど。
「のん様が高校をご卒業なされてからつい先日まで一度もお会いすることなく、それどころかその居場所すら分からずにいましたので本当に寂しかったです。毎日毎日あい様にのん様から連絡が無いか確認して確認して確認して確認して確認して……。失礼しました。本当に心配だったのです。突然地元から放れて遠い所に働きに出ていて、しかもそこがどこかも教えていただけずどのような仕事をしているのかも分からず、もしのん様が危険なお仕事についているのかと思うと心配で昼寝もできずにのん様のことで頭がいっぱいで……ぐすっ、本当に、心配したんですよぉ。だから、あい様からのん様がデビューするから前描いていたイラストよこせって言われたときは嬉しかったです。ドキドキが止まりませんでしたよ。またのん様のお声が聴けるなんて。きゃっ!」
びっくりした。いきなりこんな早口で言われると思わなかったから本当に驚いたな。それに、心配かけていたようで悪かったと思う。でもよ
「気持ち悪いわね」
「言っちまっていいのかよ」
俺も言うか悩んだけど愛衣羽はあっさり言いやがったな。
:バッサリいったな
:ドSのそれを感じた
:LAI先生ってこんな人だっけ
:いつももっと大人しかった気がするけど
:のんの姉御専用人格ってこと!?
「えっ。き、気持ち悪かったですか?」
せっかく菊花と久々に話せると思ったらこんな変な空気になってしまった。学生時代は俺の記憶の中ではもっと大人しかったはずだ。だからびっくりしたのもあるそれでもやっぱ気持ち悪いとも思っちまう。
「ええ、気持ち悪かったわ」
愛衣羽のように口に出す気はないけどな。
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