第10話 破壊!

「人形愛でーす。一旦ミュートしまーす」


 愛は部屋に入ってきてすぐにマイクを切り別のマイクを繋げた。俺には初めて見る形のマイクに声を乗せる。


「大丈夫か? これ聞こえてるか?」


:右耳が幸せ

:近い! 近い!

LAI:幸せ……」

:耳が孕むぅ!

:聞こえてるよ


「バイノーラルマイクって言うのか? ちょっとこれ使わせてもらうぞ」

「左耳は私が喋るわね」


:左は可愛い

:ギャップすごすぎ

:姉妹に挟まれてる

:急にコラボになったな


「これでこの質問に答えさせてもらうぞ」


@のんの特技教えて@


「姉さんの特技は私もさっき聞いたばかりだけれどまだ疑っているわね」


:バイノーラルで見せる特技ってなんだ?

:私を惚れさせること

:俺をメスにすること

:こいつら……


「それじゃあやるか」

「説明するわ、今姉さんの手にはリンゴがあるのよ」


:リンゴ?

:何すんの?

:食べるの?

:それ特技じゃないだろ


「まあ聞いてな」

 俺はリンゴを握って思いっきり力を込めた。


バキバキ! ゴスッ!


:!?

:ヒエッ

:潰した?

:意外にいい音

:え?


「本当にできるのね……」

「ってことで俺の特技だ。リンゴジュース造り」


:完全に予想外

:飲みたい

:握力強すぎ

LAI:来世はリンゴになりたい

:70kg無いと割れなくね

:のんの握力いくつ


「もう覚えてないけな。握力強いのは生まれつきだ」


 もう菊花はほっとこう。


:なにそれ

:ほんとに人間?

:↑人形

:ゴリラじゃん

:すっご


「まあでも力が強いだけだぞ? 他に何かできるとか無いからな」

「それでも十分すごいわよ」


:それな

:愛は知らなかったの?


「知らなかったわ。これくらい教えてくれてもよかったのに」

「教える機会無かったしなぁ」


 実際俺らはそれぞれ隔離されてたから学校で会えるようになった時にもそんな力使こと無かったしな。わざわざこんなのを見せてビビられるのも嫌だったし。


@カルピスを無糖コーヒーで割るとうまい@


「何で今これなんだ?」

「知らないわよ。私もランダムで選んでるんだから」


:うまそう

:いきなりだな

:カルピスは原液?

:待ってバイノーラルのまま進むの?

:何対何か教えてよ


「これどうすんだ?」

「作ってみましょう。カルピスは原液でいいのよね」


 そう言って愛はキッチンに向かった。その間俺は一人で続ける。


@今まで振った女の数を発表します! ズバリ!@


:100!

:73

:53万!

:多いなあ

:三桁行くのか?


「80くらいか? あんま数えてねえから分からん」


LAI:確か97です

:多っ

:惜しいやつおる

:本人よりしっかり把握してるのなんで


 菊花それ小学生の頃からの計算だろ、俺と会ったのは高校からのはずだけどなんで把握しているんだよ。


「姉さん出来たよ~」

「お、ありがとな」


 愛衣羽がコップを差し出してくれた。見た目はほとんどコーヒーだな。とりあえず飲むか。


:ゴクッ、ゴクッ

LAI:のん様に飲まれてる♡

:カルピスがな

:コーヒーがな

:どっち?


「確かにこれカルピスとコーヒーどっちなんだ?」

「難しいわね」


:カルピス原液だしカルピスだろ

:コーヒーの割合多いじゃん

:カルピス!

:コーヒー!

:割れてるなぁ


「何争ってんのよ。仕方ないから多数決にするわね」


 愛衣羽は配信サイトの投票機能を使って投票を始めた。その間に俺はコップをからにする。結構うまかった。


カルピス ・ 52%

コーヒー ・ 48%


「カルピスの勝ちだな」


:おっしゃああああ

:負けた……

:ギリギリ

:何でこんなアツくなってんの


@今後の目標とかあるの?@


「これは私が答えるわね。数か月後にVRMMOの新しいゲームが出るでしょ? それまでに3D化を果たしてその姿でゲーム実況配信することね」


:まだタイトルも発表されてないやつ?

:あの個人配信が初めて実装されっるって噂の奴ね

:大体半年後だよな

:最近のVRMMOアバターが世界観に合っていれば使えるもんな

:全然間に合いそう

:LAIママならすぐ作るだろ


「今の姿のままで世界観に合うなら良いけれど分からないのよね。空を飛ぶ世界なら羽が必要だし、人魚の世界とか言われたら下半身魚にしなきゃならないでしょ?」


:確かに

:作るの大変そう

:VTuberが下半身魚にするとか言っていいんか?

:この二人人形だからパーツ付け替えれる

:設定天才


 VRMMOってあれか? ゲームの世界に実際に入るみたいなやつ。それが目標って、俺は何をすればいいんだよ。聞いた感じ菊花しかやること無くないか? 何よりまず


「愛、初耳なんだが」

「今言ったわ」

「お、おう」


:言ってなかったんかい

:横暴

:のんは何か言い返していいと思う

:二人がやるなら私もそのゲーム買お


「参加型が出来たらやるつもりだから買うのはありかもね」


@アルコール入れると別人になるで有名な愛ちゃんですが、のんちゃんはお酒は弱いですか?@


「何だ、愛お前酒弱いのか」

「そうね、大体お酒飲んだ後は記憶が無くなるから分からなかったけど一回配信で飲んだ時のを見返して自覚したわ」


 そいえば愛と飲んだこと無えな。成人した時には家出てたし当然か。


「俺は酒は強いほうだぞ、よくマスターと飲んでたしな」


:やっぱ強いか

:イメージ通り

:逆に愛がおかしい

:あれはほんとに別人だった


 マジで愛何したんだよ……


@姉御って呼んでいいですか?@


「ってか不良やってた頃後輩には呼ばれてたなこれ」

「私の同級生も呼んでたわね」


:のんの姉御!

:しっくりくるな

:すごい不良っぽい

:確かに姉御って感じ


 こうして俺の呼び名はのんの姉御になった。

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