第9話 見つかった

「のんばんは、人形のんだ」


:こんばんは

:のんばんはって、なんだ?

:挨拶それにしたの?

:聞き間違いか噛んだかと思った


「そうだな、挨拶これにしてみた。どうだ?」


 愛衣羽から聞いたがVTuberにはそれぞれ自分の挨拶を持っているらしい。挨拶を決める必要は無いが個性を持つのは大事だと言われてこの挨拶を提案された。良く分からんかったが愛衣羽からもらった挨拶だしとりあえず使ってみようと思って言ってみた。


:いいんじゃない?

:覚えやすくていい

:いいよ~


「良さそうだな。じゃあこれで行くぜ。最初の頃は忘れるかもしれないがよろしくな」


:了解!

:分かった

:それで今日は何すんの?

LAI:のんばんはです!


「LAIは今日も来てんな。今日は質問を返していくぞ。昨日募集した奴だな」


 昨日愛衣羽が質問を募集していた。良く分からんがましゅまろ? とか言うやつらしい。今日はこれを二人でやると思っていたんだが、一人でやることになっていた。


「んじゃ、最初のいくぞ」


@現在愛のチャンネルで活動しているけど自分のチャンネルを持つことは無いの? 後現在登録者が60万を超えているけどいきなり大勢から見られる緊張とかある?@


:確かにそれは聞きたい

:強くてニューゲーム状態

:緊張はしてなさそう


「そうだな……まずチャンネルに関しては家にパソコンが一つしか無いから作っても意味が無いんだよな。後緊張は無いな」


 昔から人に見られ続けてきたから今更緊張とか無いな。


:それならしょうがないな

:不便そう

:二人なら大丈夫なのか?


「今のところ問題は無いぞ。俺はそもそもパソコン分かんねえからあんま使わねえしな」


 一人でもちゃんと話せそうだな。どんどん次に行こう。


@イケメンの秘訣を教えて下さい。いい加減モテない人生には終止符を打ちたいんです。その性格や声はどこで身に付けたんですか? 教えて下さいお願いします@


「切実だな……」


:ガチだな

:俺も聞きたい

:声を身に付けるってなんだ?

:流石に声作ってると思ったんだろイケボ過ぎるし

:これを聞けば俺も明日からモテるかな

:無理だろ


「秘訣とかねえよ。性格は親に歯向かった結果だし声は生まれつきだ」


 そもそもモテようと思ってモテてるわけじゃねえんだよ俺は。俺に聞く質問じゃねえだろ。


:地声ってこと?

:っぱ遺伝よ

:希望などなかった

:親に歯向かった結果w

:反抗期の性格抜けてないの?


「あーそれっぽい質問も来てたな」


@のんは何でそんな男っぽい話し方なんですか? その性格は素ですか?@


 これはどう説明すればいいんだ? 親の話を愛衣羽がどれくらい話してるかも知らねえし、俺の話で済むところだけにしておくか。


「一時期グレてた時があってな、仲間とつるんで不良みたいなことをしてた時期があったんだよ。犯罪はしてねえぞ? その時からゆっくりこの性格になってそのままだな」


 あの頃は楽しかったな。皆で夜集まったりたまに学校さぼったりして遊びまわっていた。親に反抗した奴らの集まりで本当に悪いことをしたかったわけでは無いから犯罪には手を出さなかったがな。それも含めていい思い出だ。


:マジで怖そう

:犯罪して無いならセーフ

:喧嘩とかしてたの?

:全部勝ってそう

:今は違うんだ


「そうだな、喧嘩は大体勝ってた。だが一人だけ、バーのマスターに負けてな。それからそのマスターに拾われてバーで働いていたんだよ」


:そのバー行きてえ

:そのマスター何者

:やっぱのん強いんだ

LAI:学校にいない間そんなことしてたんですか

:LAIママ学校も一緒だったの?


「LAIは俺の後輩だったぞ。昼はよく屋上で一緒に飯食ってたな」


:なにそれうらやま

:年下ママ

:何そのパワーワード

:VTuberならではだな


「確かに普通にはねえ話だな。まあそれは置いておいて次に行くぞ」


 俺は一端パソコンから離れて扉を開いた。


「愛ー! あれのセットしてくれー!」

「はーい!」







 とあるバーにて


「マスター、最近俺が見ているVTuberの姉が一緒に活動しだしたんだよ。これを見てくれ、この声なんか聞き覚えないか?」


 そのバーの常連である男はマスターに自分のスマホを差し出した。その画面には水色髪の清楚な女と赤い髪に黒のメッシュが入った一見男にも見えそうな女の人が映っていた。


「こいつ、こんなことしてやがったのか」

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