第36話 グレートパピヨン
「艦長。」
「かんちょお~~~?」
「失礼しました。隊長。」
「冗談よ。なあに?」
「『天使』の拠点まで南西20キロの地点まで来ました。」
「ありがと。進路はこのまま、目的地だけ入力してあとは移動、攻撃全部オートコントロールにしちゃって~。」
「グレートパピヨン、人も鳥も『天使』もすべて焼き尽くすのよ~。」
街はたちまち火の海になった。拠点に近い森も同じようになるのは時間の問題だった。
「おいおいおいおい…。何だよこれは…。」
「おそらくインセクターが作った戦艦だろ。」
「そんなことはわかってんだよ!何で炎が上がってんだよ!何で森が燃やされなきゃなんねえんだよ!」
スワローはこの惨状に怒りの炎を抑えることができなかった。戦艦に向かうそのスピードは一瞬でオウルを、敵インセクターを置いていった。
「待て!あいつ…みんな、手を貸してくれ!椿を追うぞ!」
通信を送ったオウルだが全員が戦いのさなかで加勢できるものは少ない。クロウもその一人だった。
「行って来いよ、烏丸。」
「…いや、応援に向かう。」
「行けよ…!アレを止めるのはお前らにしかできねえんだ。俺を、なめるなよ。」
「…わかった。いずれ戻る。」
「気にすんな。とっとと行ってこい。」
オーストにそう言われクロウは飛び去った。ただ、自分と同じ姿のバードマンが拠点に向かうことを考えると体はそう動いてくれなかった。
「…やはり戻る。」
「お前、人の話わかってないのか。」
「知らん。体がそう動いた。」
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ホークの眼前には第1番隊の副隊長・ギラファーがいた。ただ、ギラファーはホークを阻もうとしなかった。
「斬らなくていいのか。私は敵だぞ。」
「止めなくていいのか。俺は敵だぞ。」
「先に答えてやろう。言ったはずだ。私は種を守るために戦う。」
「これは違うと?」
「ああ。私は破壊を好まんよ。たとえ戦争の兵器として作られたとて、この体は私のものだ。好きにさせてもらうよ。」
「兵器として…。」
「受け入れられぬか。まあいい。」
「受け入れられないさ。でも…それでも俺は…この力であすかを守る。」
答えずにグレートパピヨンに向かっていった。
「体は正直だ。若いな…。こちら桑形、スタッグ隊撤退するぞ。」
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真っ先に艦砲射撃を潜り抜けたスワローはグレートパピヨンに潜入した。
「隊長!侵入者です!例のレジスタンスのバードマンです。」
「来たわね~。全員、本艦はオートコントロール継続。みんな~変身して迎撃するわよ~。」
その言葉を受け、蝶型インセクター・バタフライや蛾型インセクター・モスに変身した。
「どけ!どけい!」
単身艦内に飛び込んだスワローだが、全体攻撃を持たない剣士には不利な状況なのは本人も考えてはいられなかった。気が付けばレイピアを持ったバタフライとモスに四方に囲まれていた。
「えい!」
「えい!」
「えいやー!」
「くっ!緑深剣!真空燕返し!」
「ぎゃー!」
「くそ…斬っても出てくる!」
それでもスワローは生傷の絶えない体に鞭を討ち前に進んだ。
「せやああ!」
「燕返し!」
「ぎゃあああ!」
「燕返し!」
「ぐえあああ!」
「はあ…はあ…。キリがねえや。でも、止めなければ。」
足を前に進めたその時、脇腹をレイピアが貫いた。
「ぐっ!」
すぐに刺したインセクターを切り払ったが前に進むのも体が重くなっていった。
「ぐ…はあ…はあ…。もう、時間が…ないか…。」
傷が傷んだが、操縦室まで一気に飛ぶことにした。緑を守るため、そして”残された時間”をフルで使い切るために。
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