第33話 大地の剣士
「どりゃああああああああ!」
オーストが大地剣を勢いよく振り回せば第4番隊のアリ型インセクター、アントを次々と吹き飛ばした。
「キシャアアアアア!」
「次の相手はどいつだ!」
「大兄ちゃん!後方から5体、それから右から3体!」
「おうよ!大地剣!」
こうして蹴散らした敵インセクターは75を数えていた。それでも物量で攻めるアントの大群の中から女王アリの姿をしたインセクターが現れた。
「はあ…はあ…女王様のお出ましかよ。」
「私は第4番隊・膜翅(まくし)部隊副隊長、そしてこのアント軍団の指揮をしている蟻川。我らインセクターとバードマンの争いに介入する愚かなベーシックよ。今すぐ天使を差し出せ。そして直ちにこの地から去るのだ。そうすれば貴様たちの命だけは助けてやろう。」
「お前…馬鹿なのか?」
オーストは肩で息しながらも余裕の笑みを作った。突き出した左の拳からは
「そんな脅し文句であすかちゃんを差し出すと思った!?馬鹿にするのも大概にして!」
「そうだ!あすかちゃんは俺たちにとって家族同然!俺たちが命かけてでも守る!」
「悪い奴、ここから出ていけー!」
「よく言ったぜ、千鶴、陽太、うい…。と、いうことだよ。俺は大地の剣士オースト、俺たちはあすかを…仲間を、人間を守るために戦うぜ、女王アリさん。」
「くっ…だが、いつまで強がっていられるかな…。」
「そのセリフ、そのまま返してやる。」
「貴様は気づいてないようだな。この間に地中に潜行した我がアント部隊が貴様と拠点の周辺にリモート爆弾を置いたことを。」
「何…!?」
「この爆弾はスイッチだけではなくそこを踏んでも爆発するようにできている。どうだ脆弱な人間、飛べない貴様には身動きがとれまい。さあ『天使』とともに木っ端みじんになりな!」
この時蟻川の挑発を受け、オーストの脳内はかなりクリアになった。
「そう、俺は『飛べない』さ…でも『跳べる』んだぜ。」
「何をわけのわからないことを…。」
蟻川がそう言ってる間に得意の跳躍であっという間にオーストが背後に回った。
「自分の周辺に爆弾は置いてないよな。」
「うう…。」
オーストは有川の背中に剣の切っ先を向けた。
「さあ、爆弾をすべて解除しろ。」
「う、うわあああああああ!来るな!来るな!」
まさかベーシックヒューマンに裏をかかれるとは思わなかった。その気持ちから有川はパニックを起こした。
「お、おい待て…。」
「う、うわああああああああああああ!」
5、6歩ほどあとずさりした有川は尻もちをついた。その場所はさっきまでオーストが立っていた場所の近くだ。カチッという音がした。
「えっ…。」
ものすごい爆発音とともに蟻川は爆破四散した。敵幹部のあっけない最期にオーストは茫然とした。
「この状況…どう見たっててめえが有利じゃねえか。それがちょっとうまくいかなかっただけでこうだ…。あんまり人間、なめんじゃねえぞ…。」
あれだけいたアント軍団も指揮系統がなくなり混乱したのか、一目散に拠点を離れた。
「おい、ちょっと誰か…。せめて爆弾の解除してくれよ…。」
そう言いながらも力が抜けたのか変身を解除し、ペタッと地面に座り込んだ。通信を送った。
「こちら立川。蟻んこ軍団は撤退した。椿、お前家に金属探知機とかないのか。」
『お前戦闘中に何言ってんだよ。地雷撤去するわけじゃあるまいし、そんなもん家にあるわけねえだろ。』
「そうだよなあ…。」
通信が切れると立川はとりあえず守った大地の上に横たわり、まだ戦乱の続く空を見上げた。
「負けんじゃねえぞ。みんな…。ここを帰る場所にするからよ…。」
立川は息が整うのを今は待つことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます