第34話 月と虹の交錯
クロウが飛んだ周辺にはインセクターはいなかった。ただ、極彩色の羽が次々とクロウに襲い掛かってきた。
「コンセントレーション!よそ見してんじゃあないわよ!レインボー!フェザー!ビットぉー!」
「クジャクか。まさか、不知火も天野あすかを。」
「だったら何よ。行かせないわよ。」
クジャクが指を鳴らすとクロウは自らと同じ姿をしたバードマンに包囲された。その数は12にのぼる。
「…これは。」
「そう、あんたよ。よくできてるでしょ?」
「俺だと…。そんなはずは、俺は…」
「バグったわね。いや、元からかしら。いいわ。冥土の土産に教えてあげる。あんたは『第2世代』じゃないわ。『フライングトルーパー』の試作型よ。」
不気味な笑みをこぼしたクジャクはさらに話を続けた。
「あんたはヒト型戦闘兵器ってことよ。そして13ある量産機のひとつ。だから戦いしかわからないのよ。そう『プログラム』されたからね。」
「違う…俺は…。」
「違わないわ。あんたは紛れもない『烏丸樹月』、月光剣を操るバードマンよ。そして…。」
クロウは自分の姿をした黒いバードマンを見渡した。
「こいつらもみんな『烏丸樹月』。あんたはバグがなければ悩まなかったわよ。本能のままに行き過ぎたわ。自我なんて芽生えちゃってさ。言ったわよね。あんたに安息の場所なんてないって。あんたの居場所は血の匂いのする戦場のみよ。」
「違う…!」
「違わないわ!あんたは政府によって生み出された人型兵器よ!」
「違う…!違う違う違う…!」
「本当にバグったのね。いくら言っても無駄よ!さあ行きなさい!フライングトルーパーたち!『天使』をかっさらって来なさい!」
「…くっ!」
すぐさま引き返そうとしたが、クジャクは許さない。
「行かせないわよ!レインボーフェザービット!」
こいつを倒さねば、フェザービットを前に交わしたクロウだがあっという間につばぜり合いに持ち込まれた。
「アタシの虹彩剣(こうさいけん)、知らなかったわけじゃないわよね!」
「お前は…!」
「結局人間にはなれない。あんたはアタシと同じ穴のムジナなのよ。さあ、殺しあいましょう!」
「俺は、殺すためには…戦わない!月光剣!クレッセントスラッシュ!」
「ぐおおお!」
落とされた右腕から火花が出ていた。
「その腕…。」
「アタシは人間とっくにやめてるのよ。言ったでしょ、あんたとアタシは同じ穴のムジナって…。」
「違う、俺は…俺は…。」
「まあ、いいわ。腕がないんじゃ戦えないわ。せいぜい『天使』が捕まらないようにあがきなさい。」
そう言ってクジャクは戦線を離脱した。クロウはただただ無心で拠点に向かっていった。
ちょうどその頃、別部隊とイーグルは別の場所からクロウの急降下を見た。
「よそ見するな!」
「近藤…。」
「決着をつけるぞ、鷲尾…。」
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