第26話 再会の真実
「鎌田!鎌田じゃないか!」
「ふっ…相変わらず派手に暴れているじゃないか、立川。」
「うるせえぞキザ野郎!」
この鎌田という男、フルネームは鎌田切人(かまだ・きりと)。立川の傭兵時代の仲間らしい。雇われ先は別々だったようだが戦地をともにすることが多く、いわゆる『腐れ縁』になっていったようだ。
鎌田は傭兵で培った体力と戦闘力を生かした仕事をしているようだ。どのような仕事なのかは詳しく教えてくれなかったが。
「テロ組織…?」
「ああ、この混乱に乗じて暴れている輩がいるんだ。」
「さっきの鎖鎌もか?」
「あれは『シザーズ13(サーティーン)』。名前は確かな情報筋からだ。奴らの活動の源は『絶望』。」
「妙な話だ…。」
「お前の頭でも理解できるレベルでいうと、ヤケになって破壊活動をする連中さ。」
「俺の頭レベルの話は余計だ。」
そういって鎌田はあすかたちの町まで護衛することになった。彼がバイクで先導するということだ。立川の昔の知り合いとはいえ、護衛にいささか不安を感じていた灯夜だったが、向こうが乗り気だったため押し切られる形となった。
結局、何も起こることなく町にたどり着いた。あすかの祖父、資仁の家まではあすかと灯夜、烏丸が行くことにした。大人数で行くわけにいかず立川は鎌田とハイエースで待機した。
「お前…あれからどうしてたんだ。」
「まあ、いろいろな…お前に話してもわからんだろ。」
「皮肉屋は相変わらずだな、鎌田。」
「フン…。」
鼻で笑った後、神妙な面持ちで鎌田は立川に聞いた。
「なあ、立川。お前、この世界に希望ってあると思うか…。」
「なんだ、壺なら買わねえぞ。」
「お前にもそんな知恵があるのか…。」
「うるせえ。」
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「今更どの面下げて戻ってきだんだ!」
「そうだ!お前は、お前たちバードマンがまた戦争をもたらした!」
「貴様らが空を飛んでいる間に!どれだけの人が死ぬんだ!」
案の定、町では灯夜たちに対する罵声が360°全方位から聞こえた。わかっていたが、灯夜の胸に刺さる言葉ばかりであった。
「待って、みんな。灯夜は、私たちを守ってくれた!」
灯夜の前に両手を広げてあすかが立つと、群衆の中から資仁が現れた。
「あすか…お前、どこ行ってたんじゃ。なぜ、バードマン共に着いていったのじゃ…。」
「ずっと…ここにいちゃいいけないと思ったから。」
「今になってなぜ戻ったんじゃ。」
「知りたいから…。」
「何をじゃ?」
「私がどうしてここにいたのか…。」
「お前に話すことなどない。」
頑なな資仁に烏丸が切り込んだ。
「彼女のルーツを知ることが戦いを止めるカギになるかもしれない。貴様たちのためでもある。教えろ。」
この一言に資仁も固まったのち、黙って自らの家に案内した。あすかだけではなく、なぜか灯夜と烏丸も入ることを許された。正確には着いてが、拒否されなかっただけの話ではあるが。灯夜にとっては『鳥籠』以外の故郷であるが、今はノスタルジーに浸ることすら許されないような心情であった。
「まずあすか、お前はわしの孫ではない。」
「……。」
あすかは真実を知って固まって動けない、というわけではなかった。
「わかってる。私は文明破壊システム…。」
「そう、お前は戦争を引き起こす源となるものをすべて破壊し世界を再生させるために作られた人造人間『破壊天使』の第1号機だ。」
「じ、人造人間…。あすかは人ではなかったのか…。」
灯夜は沈黙を抑えられなかった。無視して資仁が話を続ける。
「人間にカモフラージュさせるために人工的に臓器、骨格、皮膚をつくり年月とともに肉体をアップデートできるように『設定した』。」
「でも私、ほかの人と同じようにご飯食べて、寝て、勉強して、笑って…。」
「人間に擬態するため、そう『設定した』。コンピュータも電源を切る必要があるから寝るし、学習してメモリーに入れる必要もあるからな。」
「おじいちゃん…さっきから『設定した』って…。」
「そうじゃ。ワシは政府の『文明破壊プログラム』のプロジェクトメンバーの一員じゃった…。ワシがお前をつくったんじゃ…。」
あの農作業に勤しみ、あの時までは庶民派だった資仁の衝撃の過去に一同は声を失った。
「我々人類は生活圏の拡大のため、様々な技術を発展させた。部位アーマー、動物細胞の合成化、データの実物化…しかしこれらは戦争の道具になることを危惧し、実際にそのような状況になってしまった。人の過ちは人の手で正さねばならない…。そのために18年前、政府が抑止力として秘密裏に開発したのがこの『文明破壊プログラム』じゃ。」
「じいちゃん、あすかは…このままだとどうなるんだ?教えろ!!!」
灯夜は感情を抑えられなくなった。とっさに烏丸が静止した。
「戦争因子…。戦争に関する知識や事象を知るたびに蓄積されていく。」
「私が戦いを見ると…ううん、そういえば歴史の授業やニュースを見たとき頭が痛いのも。」
「急激にデータが蓄積されたからだろう。この数値が上がるたびに彼女の力は段階的に覚醒されていく。放熱したり、戦争を起こす兵器にビームを発する。この数値が200を超えたとき、彼女は『破壊天使』になる。」
「その破壊天使って…。」
「ああ。『破壊天使』として、すべての兵器だけでなく人間の文明すべてを見境なく滅ぼそうとする。そして争いのない世界に再生させる。人間の姿と自我を捨ててな…。」
「そんな…自我を無くすって…。おい!止める方法はないのか!」
「そんなものはない…。本気で失敗したときの後始末しか考えてなかった政府は抑止プログラムのデータを消去した。だから方法は2つに1つ、完全に戦争を止めるか、あすかを…殺すか。」
「おじいちゃん…。」
覚悟していたとはいえ、この言葉にあすかも絶句した。
「だから灯夜、お前たちがバードマンと知ったときあすかから離れてもらうために出てもらった。しかし…。」
「じいちゃん。俺はね、戦争を起こすんじゃあない。『守るため』に、戦うんだ。あすかを、全人類の未来を。」
「灯夜…。」
「おじいちゃん。どうして今まで私と一緒に暮らしていたの?」
「リスクを大きく孕んだこの計画は中止になった。人間のようにすくすく『成長』するお前を見て引き取ったんじゃよ。あすか…お前には過酷な運命を…背負わせてしまったよ…。そして灯夜…、すまなかった。」
「おじいちゃん…今まで…ありがとうございました。」
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全てを知ったあすかたちが戻り、立川たちと合流した。しかし、この町に向かう道中で出会ったような鎖鎌の男たちが瞬く間に5人を囲んだ。それは何か、このタイミングで戻ってくることを知っていたかのようだ。
「ククク…変身。」
不気味に笑いながら彼らは異形の姿へと変わった。カマキリ型インセクター・マンティスだ。
「インセクター!」
「剣を抜くぞ。」
「おうよ!変身!」
3人はそれぞれホーク、クロウ、オーストに変身した。
「お前たちがバードマンか…。」
「鎌田、説明は後だ!あすかを連れて逃げろ。」
「それは…無理だね。」
そう言うと鎌田はあすかの首に鎌を回した。
「…鎌田?」
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