第24話 はじまりの5人

「戦えるさ…。ただ、お前たちに与するつもりはない。」


 その一言だけ放ってコンドルは自らを大空に解き放った。それを追いかけるようにイーグルも戦場の空を舞った。


「いいか、俺たちの目的は隊長機ハットージの撃墜および異臭、ノイズの元を断つことだ。コンドルは攻撃対象から外す!」

「「「「了解!」」」」

「…。」

「…了解!」


 6人はそれぞれの形で指示に従い、散開した。


「食い止めろ!シカーダ軍団!クラッシュノイズ!」

「その手は通用しない!ツインサイクロン…そして!クロスサイクロン!」


 コンドルの2つの剣から放たれた竜巻は1つになりより大きなものになった。シカーダ部隊もこれには成すすべなくすべて吹き飛んだ。


「ぐぬぬ…。」

「貴様、『力などなくても戦術で勝てる』と言ったな。そんなお前を効果的な戦法で倒してやる。『圧倒的な個の力』を合わせた一撃で!」

「小癪な!」


 イーグルはそう言うと腕に力を込めて何か気をためるようなポーズをとって叫んだ。


「うおおおおおおおおおお!近藤!白鳥!椿!雷太!フォーメーションV(ヴィクトリー)だ!」

「やるんですね、あれを。」

「へへっ、久々だねえ。」

「今の俺たちなら…やれる。」


 剣士たちはイーグルの周りに集まったが最後のピースが足りない。


「近藤!お前も来い!。」

「命令するな!言ったはずだ、お前たちに与しないと。」

「命令じゃない!現状での最適な戦法を『提示』したまでのことだ!」


 コンドルは黙って合流し、イーグルの右斜め後ろについた。


「フォーメーションV!コードネーム『火の鳥』!」


 Vの字の後方かつ両端にいたスワローとオウルがハットージに交差しながら斬りかかった。それからスワンとコンドルが、最後にイーグルが太陽剣でハットージの体を貫いた。交差しながら逆Vの字が出てくる姿は大きな不死鳥の羽ばたきにも見えた。


「あれが…『第1世代』…鷲尾さんたちの力…。」

「すげえ…。」

「…。」


 戦士クロウでさえも一瞬、視界が『火の鳥』に行った。


「ぐおおおおおお!おのれバードマンめ!人間に…人間なんぞに…われわれインセクターは…ぎえあああああああああ!」


 隊長機ハットージは爆散した。この場にいたインセクターもすべて撃退し第5番隊は実質的に壊滅したといってもいいだろう。ここでの戦いが終わったと判断したバードマンたちはそれぞれ剣を鞘に収め、変身解除した。鷲尾達4人と近藤が向き合っていた。


「近藤…。」

「鷲尾。これが最後だ。『鳥籠』に戻れ…。」

「……それはできない。」


 鷲尾がそう言った瞬間、何かを悟った近藤は烈風剣を鷲尾の首に向けた。


「ならば次に会ったときは…お前を倒す。」

「近藤…。」


 それだけを言って立ち去ろうとした。


「近藤、僕たちは本当に戦う必要があるんですか。」

「お前たちが不知火隊長のもとに戻らないからだ。」

「なあ~お前こそなんで不知火さんに拘るんだ。」

「あの人が理想とする世界に賛同したからだ。バードマンの尊厳が守られる世界をつくるために。」

「あの人はその理想のために守ることを条件に人間を支配下に置こうとしている。俺たちが『創られた』目的はあくまで生活圏の拡大のためだ。決して戦うためでも、ほかの誰かを蹂躙するためじゃないんだ。」

「じゃあお前たちはなんだ!力を使っているじゃないか!その力ですでに3人の隊長機を葬り、俺もお前たちも多くのインセクターを殺してきた!俺たちは生活圏を広げたんじゃあない、居場所が陸から空になっただけさ…。」


 ゆっくりと鷲尾が近藤に近づいた。


「確かに、平和な世界に俺たちはいらないかもしれない。だが近藤、お前は本当に不知火のやり方が自由を勝ち取る方法として正しいと思っているのか?」

「うるさいぞ!うるさいうるさいうるさい!言ったじゃないかあの人の理想に賛同したと!それにな…それに…。」


 近藤は急に感情を爆発させたと思ったら急に言葉を詰まらせた。


「お、お前と一緒にいては俺は勝てない…。」

「そんな個人的な感情で」

「戦争は個人的な感情から始まるものだ!5人で『鳥籠』にいたとき…作戦の中心は鷲尾、いつもお前だった。いつもお前を超えることであの人に認められたい…そう思っていた。だからお前たちには戻ってほしいと思っていた半面、俺にとっては名を上げるチャンスだと思っていた…。おかしいだろ。試験管の中で作られた俺たちは兄弟どころか同一人物かもしれない。そんな俺たちがお前たちにコンプレックスを抱いてるなんてな…。」

「近藤、僕たちはみんな違う。出自はどうあれ君も立派な『人間』なんですよ。」

「白鳥、ならどうしてお前は最愛の人の家族が殺されたんだ?」

「おい、言っちゃいけないことがあるぜ。」

「椿、お前だって『鳥籠』から出ても人間社会には馴染めずひとり森の中にいるじゃないか。雷太も育ての家族と離れて戦場に戻ってきた。これはすべて俺たちがバードマンだからだ。俺たちは人間ではないからだ…。」


 感情があふれ出た近藤に誰も返す言葉はなかった。


「近藤…。」

「お前は喋るな鷲尾!いいか、次はお前を全力で倒す。」


 そう言い残してコンドルは飛び去った。4人はしばらくその場に立ち尽くした。『鳥籠』を飛び去ってから、もうあの時の5人には戻れない。4人は過ぎたときの長さを嘆いた。

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