第23話 2つの剣
コンドルは部下のバードマンを引き連れて現場に向かっていた。
「今日は少ないな。非番か。」
「いえ、リジェクションが酷くて…出撃できるのは我々5名のみです。すみません。」
「謝るのは俺の方だよ。君たちの身体のことも知りながら…。ってぐっ…なんだこれは。」
そのポイントに近づくにつれ激臭が鼻を突き刺してきた。その臭いが黄土色を付けているように見えているのは決して気のせいではなかった。
「隊長…このガス…。」
「ああ…生物にとって有毒なガスの可能性が高い。」
そう断定したコンドルは早速、不知火から授かった疾風剣も取り出し二刀流をいかんなく発揮した。
「烈風!疾風!ツインサイクロン!」
コンドルの翼と2本の剣が起こした風が毒ガスを払った。その先に見えたのは苦しみながら果てていった屍の数々だった。コンドルは今一度、疾風剣を強く握った。
「こ、これは…隊長!」
「わかっている…わかっているさ…。」
この怒りにかぶさる様に不気味な笑い声が響いた。
「キヒキヒキヒ…」
「戦場で笑うな…。」
「失礼。こんな簡単に我らの毒ガスが効くとは思わなくてね。」
そういったのはインセクター第5番隊・半翅(はんし)部隊隊長の亀梨風磨だ。カメムシ型インセクター・スティンクの強烈な臭いのする毒ガスでこの街の人間を根絶やしにすることでインセクターの拠点をつくろうとしていた。
「脆弱な人間は科学によって発展してきた。その果てが我々インセクターやお前たちバードマンだ。ただ人間は我々を失敗作として切り捨てた!過ちと弱さから逃げた人類が自らの科学によって朽ちていく。この因果応報…正に喜劇よ。キヒキヒキヒ…。」
「笑うなと言ったぞ。バグどもが…。」
「お前たちとて同じではないか!優れた力を持ちながら忌避され、その憎しみから力を持って人間を管理下に置く。」
「俺は…俺たちは違う。お前たちとは。」
「違わないね!我々と同じ『復讐者』なんだよ。お前たちは。」
コンドルが返す言葉を無くしたその時、うめき声が聞こえた。
「隊長、生存者がいます!」
「し…死ぬ…嫌だ…!」
「あ…あああ…。」
「た…助けて…。」
市民たちの心の叫びが聞こえた。コンドルは身動きが取れなかった。
「キヒキヒキヒ…。動けまい。そこでもがいているのは人間…。お前を忌み嫌った人間…お前を『鳥籠』に追いやった人間だからな…。安心しろ、私は手を下さん。放っておいてももうじき死ぬだろうからな。」
コンドルは亀梨のゲスな笑いとうめき声の中、仁王立ちのまま葛藤の中にいた。怨恨と使命感と倫理観がぶつかり合った結果、部下に命令をした。
「住民を外に避難させろ。それからお前たちもダメージを負っている。住民の避難が完了したのち離脱しろ。」
「隊長…。」
「急げ!」
部下のバードマンは1人ずつ市民を運び、離脱した。
「これで我々と違うとでも言いたいのかな?」
「そうではない…。ただ…戦争を、殺しを愉しむお前は生かしておけない!」
「貴様こそ、生きて帰れると思うな。変身!」
亀梨は隊長機・ハットージに変身し、部隊総出でコンドルを迎え撃った…かに見えた。
「う、うわあああああ!」
どこからか聞こえる破壊音波がコンドルを苦しめた。
「かかったな。シカーダのクラッシュノイズにな!お前を倒すのに力はいらない。完璧な戦術によって勝利するのだ。さあ我らが毒ガスを食らって死ね!」
「くそおおおおおおお!」
「高電磁フィールド!」
オウルの電気のバリアが毒ガスを止めた。
「流水剣!アクアドラグーン!」
スワンの水はノイズの音源たちを流していった。
「緑深剣!木葉隠れ!」
スワローが敵陣に切り込んだ!
「太陽剣!南中日輪落とし!」
「おっとお!」
赤き太陽剣士の一撃をハットージはとっさにかわした。
「お前たちは…」
「翼のレジスタンス。そして俺は…太陽剣士、イーグル!」
イーグルは太陽剣を真上に大きく掲げた。
「鷲尾…。」
「苦戦しているな…近藤、立てるな。」
コンドルは黙って立ち上がることで意思を示した。
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