第19話 もっと強く

「なぜ独りで戦った!」


 拠点に戻ると珍しく鷲尾が激高した。


「お前の勝手な行動が原因であすかが敵の手に渡っただけでなく、市街地にも甚大な被害が出た。」

「囲まれては、戦うしかなかった!」

「素人が分かったように言い訳するな!」

「俺は…!」

「『戦いの素質』がある『第2世代』とでも言いたいのか。お前は戦場を、戦いを知らなさすぎる。だから素人と言った。」


 灯夜は返す言葉がなかった。


「こうしている間にあすかは…実験の道具にされるかもしれないんだ…!」

「道具って…あすかは!」

「見ただろ…少なくとも彼女は普通の人間ではない。」

「あすかは…あすかは俺の大事な家族だ!」

「だったらなぜ彼女を守るための最善の行動を取らなかった!『希望の灯』に、お前が、なるんじゃないのか!」

「くっ…!」


 奥歯にいろんなものを嚙み締めた灯夜は部屋を飛び出した。


「鷲尾…すみません。僕たちは君に嫌な役を押し付けました。」

「気にするな。」

「お前自身が責任を負ってることもわかる。だけどな…少しは俺たちを頼れ。」

「ならそうさせてもらう。椿、灯夜のこと頼めるか。」

「任せろ。」


 椿が出ようとした瞬間誰かが左肩をつかんだ。


「…お前も行くか。烏丸。」


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 飛び出した灯夜はホークに変身し必死に剣を振り回していた。


「おい、山火事でも起こす気か。」


 そういって合流してきたのは椿と烏丸だった。


「なんですか?俺は、もっと強くならなきゃいけないんです。」

「そう独りで背負い込むな。あすかの事は俺たち全員に責任がある。だからよ…。」


 椿はホークの姿を見て特訓に付き合うことを話そうと決めていた。しかし、クロウに変身した烏丸が一直線にホークに切りかかった。


「待て!」

「敵は待たない!」

「何なんだよいきなり!」

「敵は待たんと言った!」


 ホークとクロウの互いの剣がぶつかる金属音が響いた。圧倒的手数で攻める烏丸だったが、ホークもこのままでは終わらなかった。


「何だよ!」


 その一言とともにホークの身体は炎に包まれた。


「…これは…。」


 クロウも驚きを隠せなかったが、何よりもホーク自身が驚いていた。


「炎の剣士…覚醒か…。」

「俺の…炎?」

「灯夜、俺たちの剣には太陽、風、雷、水、大地など様々な属性がある。お前さんには炎凰剣の戦士だ。俺たちは自然の力を与えられ、それを利用して戦う。この『属性』と『剣術』が合わさって俺たちは強い剣士になれる。」

「強い剣士…あすかを守る力…。」

「灯夜、自然はいいぞ。自然は俺たちに力を与えてくれる。戦うだけじゃない、『生きる力』だ。」

「生きる…力。」

「そうだ。そんな自然を守るために俺は戦う。お前も、守りたいだろ?あすかを。」

「…はい!」

「そうと決まりゃあ、属性トレーニングだ。ここじゃ山火事になるからな。」

「そうですね。」


 灯夜は柔らかい表情を一瞬しか見せられなかった。招かれざる来訪者が来たからだ。


「そうはさせないわよ…。」

「お前は…まさか…クジャク。」


 名前を烏丸に呼ばれるとクジャクはニチャっと笑った。


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 一方、立川の地下基地に来るはずのない男が現れた。


「貴様…不知火…どうしてここが。」

「因子の導き…とでも言っておこうか。」


 そう言った不知火は不敵な笑みをこぼした。

 

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