第6話 森の来訪者
鷲尾、灯夜、あすかの3人は森の中を進んでいた。先のインセクターとの大戦以降、鷲尾の『拠点』の案内と仲間の紹介が主たる目的だ。
「仲間って、何人ぐらいいるんですか。」
「拠点には1人だ。」
「それで足りるんですか。」
「いや、この世の中ひっくり返すには俺たちを入れて7人は必要だ。」
「当ては…あるんですか。」
「『第1世代』が全員揃えばな。」
「『第1世代』…。」
問答を繰り返していた鷲尾と灯夜だが、あすかとの間に少し距離ができていることに気づいたため岩場を見つけ小休止することにした。
「ごめん。灯夜…。」
「気にしないで。せめて、あすかを連れて飛べたら…。」
「それが簡単にやってはいけないのは、お前が一番わかっているはずだ。」
バードマンというだけで故郷を追われた灯夜はうなずくしかなかった。
「人生に絶望したわけじゃないです。現状は受け入れたつもりです。でも、何で俺がバードマンなのかなって思っちゃうんです。そもそもバードマンって何なんですか?」
「バードマンは元々人類の生活圏を広げるために『造られた』。」
「造られたって…。」
「バードマンは人間と鳥の細胞を組み合わせた人工生命体だ。俺は受精卵レベルからの開発に初めて成功した『第1世代』のひとりだ。そしてお前をはじめとする『第2世代』以降が生まれた。」
「じゃあ、俺は…つくりものの命、どおりで親兄弟もいない施設育ちなわけか…。」
現状は受け入れたつもりの灯夜も固まってしまった。
「俺たちも不知火翔から初めて聞いたときは今のお前と同じ気持ちだった。だが出自はどうあれこの命は自分のもの。だから俺たちはバードマンを兵士として利用し、日本制服を図った不知火のもとを離れて、お前たちを逃がし、自分たちの戦いをするためあの『鳥籠』を出た。」
「俺の戦い…。」
「今一度問う。お前がこの空の下で守りたいことはあるか。」
「俺は…。俺だ。俺として、あすかを守る。」
「灯夜…。」
「あすか、迷いや不安がないと言ったら俺は嘘になる。でも、俺にはあすかがいる。それだけで俺が戦う理由としては十分だ。」
灯夜とあすかのやり取りを見て、鷲尾に安心感が芽生えた。その時だった。
「出てこい!さっきから俺たちを付けているな。」
と鷲尾が大声を上げると黒い影のようなものが一気に鷲尾に切りかかってきた。とっさに剣を抜いた鷲尾はイーグルに変身した。
「やるわね。イーグル。バードニック隊きっての剣豪であるクロウボーイの剣を見切るとはね。」
おネエ口調の男がそういうとゆっくりと剣を抜き、バードマン・クジャクに変身した。
「クロウ…クジャク…。」
「灯夜!お前もぼさっとしてないで抜刀しろ!」
「は…はい!あすかは下がって!」
そう言って灯夜は剣を抜いてホークに変身した。イーグルはクジャクと、ホークはクロウと戦い始めた。
「ふふふ…ふふふふ…うふふふ。まさか『第1世代』の最高傑作、イーグルと剣を交えるとはね。」
「戦場ではおしゃべりな奴から死ぬぞ。」
「ご忠告どうも。でも、アタシは死なないわよ。この虹彩剣(こうさいけん)と無数の羽がアンタを串刺しにするんだからね。」
「何っ!」
「必殺!レインボー!フェザー!ビットぉー!舞いなさい!」
イーグルは飛んでくるクジャクの羽を太陽剣でひとつ、また一つと落としていった。ホークは一瞬、その極彩色の戦いに目が行ってしまった。そのとき、クロウが眼前に迫った。クロウは一緒に来たクジャクと違いただひたすらにホークに斬りかかってきた。迷いのない攻撃にホークは押されていた。
「くっ…こいつの強さはなんだ…殺される!このままでは…。」
追い詰められたホークは大木に寄り掛かった。クロウはとどめと言わんばかりに構えた。そのときホークは剣先を突き出した。
「炎凰剣!熱波一閃!」
必死に剣先から出した炎はクロウには当たらなかった。
「…血迷ったか。死ね。」
改めて振りかぶったその時、クロウの真後ろから断末魔が聞こえた。
「キシャーーーーーーー!」
断末魔ののちに一体のインセクターがあっという間に灰になった。
「…お前は確かに強い。だが俺を倒すことに執着するあまり気づいてなかったみたいだな。インセクターに囲まれていることに。」
「……。」
クロウが振り向くとハチ型インセクター・ワスプに囲まれていた。剣を向けあっていた二人は気が付けば背中を合わせていた。そこにイーグルが駆けつけ輪の真ん中に入り、二人とクジャクに提案した。
「おい、一時休戦だ。ここを切り抜けるため手を組まないか。」
3人とも、状況を見ればそうせざるを得ないのは明らかであることはわかっていた。だが、まだ迷いの中にいた。
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