第4話 希望の灯
「待って、待ってよ!」
新たなバードマン、ホークは夜風にあおられていた。
「風に逆らうな。上昇気流に乗るんだ!」
言われるがままに対流を見つけると、慎重にそれに乗った。
「よくわからないけど…これなのか?」
まだ自分の能力を受け止めきれないまま翼を大きく広げたホークは気流に乗りながら旋回し、自らの身体の高度を上げた。安定したところでイーグルの左後ろにピタッとついて町に向かったインセクターを追いかけた。
一方、インセクターは瞬く間に町を蹂躙し始めた。
「やめろ…うわあああああああああ!」
ハエ型インセクター・フライの群れはスピードを生かし人間を捕まえ空高く持ち上げると、それをそっと落としていった。
「い、いやああああああ!」
地面から鈍い音が響くたびにあすかは悲鳴をあげた。
「あすか、ここにいてはいけない。地下に逃げるのじゃ。」
その瞬間、資仁がつかまった。
「ぐっ…!」
老人の力では抵抗むなしく、資仁は瞬く間に空中へ高く持ち上げられ、そして落とされた。
「く、くそおおおお!」
そのときだった。資仁は何かに抱えられた。そこにはオレンジ色のバードマンがいた。
「じいちゃん、無事でよかった。」
「お前、まさか…。」
ホークはゆっくりと地上に降りると資仁をあすかに預けた。
「やっぱり灯夜なんじゃな。」
「…ああ。」
「そ、そうなのか…。」
驚きとも、落胆とも思える表情を資仁はホークに向けた。あすかも幼馴染の変貌に驚きを隠せなかった。
「灯夜…。」
「じいちゃん、あすか、行ってくるよ。俺が希望の灯になってみせる。」
「灯夜、行くぞ。」
ホークは自分を呼んだイーグルと共に敵陣に飛び込んだ。地上にはフライに落とされた住民たちの亡骸があり、ホークはそれに目を背けた。
フライの群れに飛び込むとイーグルは一人、また一人と切り倒し敵陣の中央にたどり着いた。
「出たな…。」
「太陽剣士、イーグル!」
「何が太陽剣士だ。この闇夜に消してくれる!」
フライの1体がそう言うと一斉にイーグルに襲い掛かった。
「俺の剣は夜でも輝く…。太陽剣!」
イーグルはゆっくりと剣を擦ると太陽剣はたちまち発光した。
「太陽剣、閃光波!」
細く放たれた光は次々と敵の体を貫いた。
「お、俺もやらないと。町を壊し、人を殺めたあいつらを倒すんだ…。」
初陣のホークがつぶやいているうちに敵が囲んできた。
「ここにもバードマンがいたか。」
「ああ…俺は、俺は…。」
「フン、自分の名前も忘れたか。鳥頭が。」
そのとき、ホークは歯を食いしばり敵をじっと睨んだ。
「俺は、炎凰剣士…ホーク!行くぞ!炎凰剣!」
高らかに夜空に叫んだホークは自分の気持ちと同様、剣を点火させた。
「こいつ…攪乱して殺す。」
そう言って辺りを高速で回りはじめたが炎の剣士にはそんなものは通用しなかった。風に剣の炎を当て一瞬にして炎の嵐をつくった。
「ぐあああああああ!」
フライの群れはもがき苦しみながら灰になっていった。
「これが炎凰剣の力か…。」
自らの力に戸惑いを隠しきれないホークだったが、嵐から逃れたフライがまっすぐ襲い掛かってきた。
「来るな、来るなああああああああ!」
距離を急に詰められ恐怖の中、無我夢中で剣を振り敵を倒していった。
そして炎が完全に消えない中、イーグルとホークはフライの群れをすべて倒した。2人はそっと剣をしまうと人間の姿に戻った。
「勝ったのか、僕は。でも…救えなかった。」
ホークは足元の町の人々の亡骸を見て嘆いた。
「俺たちは神でなければ、ヒーローでもない。救えない命も、届かない願いもある。」
「そんな簡単に言わないでください…。」
「だから俺は、この空の下で救える命を、未来を、自由を、守っていきたい。それが『力』のある人間の使命であり宿命だと思う。」
「鷲尾さん…。」
「改めて聞く。お前はこの空の下に守りたいものはあるか。」
「ああ、何度聞いたって答えは同じさ。俺はあすかとじいちゃんと、大事な人を守る。守れなかった人の分まで。」
決意を新たにした灯夜を資仁とあすかが呼んだ。
「おーい、灯夜ー!」
「じいちゃん、あすか!無事だったんだ。よかった!」
2人に向かって駆けようとしたその時、灯夜の顔に小石が当たった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます