第3話 守りたいもの
イーグルは飛び掛かってくるバードマンたちを一人、また一人と切り落としていった。ノーマルタイプでは太陽剣士に敵わないことは明らかであった。
「くっ…命を…無駄遣いするな!」
舞い散った羽の向こうにコンドルに変身した近藤颯がいた。
「そういってお前は…烈風剣!」
「太陽剣!」
コンドルの剣技にイーグルが応じると空中でのつばぜり合いが続いた。
「お前がこの空の下で守りたいものは何だ!」
「すべてのバードマンの尊厳だ!」
「そのためなら人間の生命は、尊厳は守らないのか!」
「お前たちが『鳥籠』から出ていくからこうなった!気づけよ!結果としてお前が多くの命を脅かしていることに!インセクターを倒すことは人間も守ることになる!お前もその一人だったのにわからないのか!」
「一員だったから見えたものがある!お前たちのやっていることは自分の力を盾にして管理しているだけだって!俺はそんな自由を脅かすお前たちと戦うと決めた!」
「減らず口を!」
つばぜり合いが続いていたが、コンドルは右腕を気にしたとたんに離れた。どうやら通信が届いたらしい。
『コンドル、インセクター討伐に向かってくれ。座標はこちらから送る』
「不知火隊長…イーグルはどうしますか?」
『今はいい。』
「わかりました…。」
『不知火』という名前にはイーグルにも聞き覚えがあった。
「…不知火さんか。」
「…ああ。鷲尾、俺はあきらめないぞ。隊長も待っている。」
コンドルはそのまま飛び去った。
「隊長、か…。違うよ、近藤。」
イーグルはそう言うと人目のつかないところを見つけて地上に降りた。剣を鞘にしまうと鷲尾の姿に戻った。その激闘を2階の窓から見ていた灯夜は茫然としていた。そばで震えていたあすかは眠るように気を失っていた。彼女をベッドに寝かせるとすぐに鷲尾が降りたところに行った。バードマンの因子なのか、ただの直観なのかはわからない。ただ、彼にもう一度会いに行かなければいけない気がした。灯夜はふと、開きっぱなしの窓を見た。
灯夜たちの住む町から十数キロのところに鷲尾は降り立っていた。人間に見られぬよう、町から離れるように歩き始めたところ鷲尾を呼び声が上空から聞こえた。
「鷲尾さーん!」
声の主は灯夜だった。つい数時間前に自分がバードマンだと知ったばかりの彼の飛び方は非常に不安定だった。
「うわっ!」
「君は…力の使い方も知らないのに無理をするな。」
「無理でもしないといけない気がしたんですよ。だって、無責任でしょ。」
「俺が無責任だと…。」
「勝手に俺の前に来て、勝手に知り合いだって言って、勝手に俺もバードマンの『因子』があるとか言って、そのまま敵と戦ったらいなくなるんですか?」
「君には人間としての生活がある。それを犯すわけにはいかない。」
「もう手遅れですよ。俺、もう見ちゃったし、普通じゃないことわかったから…。だから、せめて俺がどうしたらいいか教えてください。」
鷲尾はまだ暗くならない空を見上げながら静かに、でも力強く問いかけた。
「お前…この空の下に守りたいものはあるか。」
灯夜は鷲尾が見上げた方向と同じところを見て答えた。
「ある。俺は、あすかやじいちゃんと過ごすこの日常を守りたい。」
「後戻りはできんぞ。」
「わかってます。」
決意を受け止めた鷲尾は灯夜の胸に剣を突き付けた。
「お前の剣だ。名を、炎凰剣(えんおうけん)」
「えん…おう…けん。」
灯夜は炎凰剣を受け取った。物理的な意味ではなく、確かな重みを感じていた。
そのときだった。見上げていた上空をインセクターが過ぎていった。
「行くぞ。」
「俺、どうしたらいいんです?」
「それならさっき答えが出たぞ。」
「そうじゃないです!」
「ならなんだ!」
「変身ですよ!変身!」
「剣を抜け!」
そういうと灯夜はあたふたしながらも剣を抜いた。するとたちまちオレンジ色の鷹のスーツのような姿になった。
「お前は…炎凰剣士ホークだ…。」
「これが…俺…。」
ホークは戸惑いながらも同じく変身していたイーグルとともにインセクターの群れを追いかけた。
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