第2話 因子の導き

「太陽剣士イーグル…貴様、まさか…!」


 コックローチ型インセクターたちは驚きながらも眼前にいる赤きバードマンに向かっていった。イーグルは少しだけ自らの体を宙に浮かせ、一人、また一人切り込んでいった。


 コックローチが動かなくなったことを確認するとイーグルは剣を鞘にしまった。すると一瞬のうちに人間の青年の姿に変わった。


「灯夜ー!」


 買い物にしてはあまりにも帰りの遅い灯夜を迎えに来た天野あすかの声を聞いてイーグルに変身した青年は少し驚いた表情を見せた。


「飛鷹灯夜なのか…?」

「なぜ、俺を知っているんです?あなたは…誰なんです?」

「俺は鷲尾輝星(わしお・こうせい)。太陽剣士イーグル…。」

「あなたは俺の何なんですか。」

「これも『因子』の導きか…。」

「勝手に納得しないでくださいよ!」


 灯夜が鷲尾に詰め寄っているとあすかが頭をかかえてうずくまっていた。


「う、うわあ…あ…」

「あすか!」

「まずはここを離れよう。」

「わかりました。あなたには聞きたいことがたくさんあるけど…いや、あるから家に連れていきます。」


 灯夜は鷲尾とあすかを連れて家に戻った。


「おお、あまりにも遅かったからあすかに迎えに行ってもらったんだぞ…ってお客さんか?」

「ああ、その…こちらは鷲尾さん。助けてもらったんだ、悪い奴から。」

「そうか、上がってもらいなさい。」

「もちろんさ。」


 灯夜はなんとなく鷲尾がバードマンであることを言ってはいけないような気がして伏せた。居間に上がると、あすかが客人である鷲尾に麦茶を差し出した。


「いいのか?」

「ええ…。いつも、テレビでも戦いの映像とか見るとこうなるんです。」

「君も見たのか。」

「ええ…。」

「鷲尾さん、俺の部屋で話しませんか。」


 3人は2階の灯夜の部屋へ移動した。部屋に着くと、灯夜は鷲尾に矢継ぎ早に質問をした。


「鷲尾さん、教えてもらいますよ。なぜ俺を知っているのか、『因子』が何なのかを。」

「わかった。ただまずはあのおじいさんに俺の正体を伏せてくれたことに礼を言わせてほしい。あの人はわからないが、ベーシックヒューマンの世界ではバードマンをよく思わない人もいるからな。」

「確かに、上から物のように管理して…とか言ってる人もいます。俺はそうは思いませんが。」

「そうか。まずは2つ目の質問に答えよう。『因子』とはバードマンの因子だ。」


 それを聞いて灯夜は固まってしまった。


「俺が…バードマン…?」

「そうだ。そして1つ目の質問だが、君をこのベーシックの世界に放ったのも俺だ。」

「なんだって…でも俺はあの壁の向こうにいた記憶はない。」

「ないだろうな。それは俺たちが」


 鷲尾が何かを告げようとすると、外の風が急に強く吹いた。そこには大量のバードマンがいた。その先頭にいる黒いバードマンが声を出した。


「鷲尾輝星。この町にいるならすぐに出てこい。この町にいるのはわかっている。こちらの要請に応じない場合、武力をもって身柄の確保を行う。人的被害も出るかもしれないぞ。」


 灯夜の部屋からその光景を見たあすかは再びうずくまった。灯夜はあすかの介抱ををした。


「迷惑をかけたな。行ってくる。」


 鷲尾はそういうと背中の翼を広げ2階の窓から羽ばたいていった。バードマンの群れの前に立つとイーグルは黒いバードマンを見た。


「コンドル…近藤颯か。」

「鷲尾…俺たちのところへ戻れ。」

「…断る。」

「なら、やむなし!」


 コンドルこと近藤が交渉を打ち切ると、数十のバードマンとともにイーグルに切りかかった。


「どうなっているんだ。俺がバードマンだなんて、どうしたらいいんだ…。」


 その戦いを見ていた灯夜は受け入れがたい現実と怯えるあすかを前に何もすることができないでいた。

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