第13話

4階にはヒグマに首輪を付け、生肉を与えて飼いならしている男がいた。

男は俺達を見るなり、ニヤッと笑みを浮かべつつ言った。


「どうだい、さながら『死亡遊戯』みたいだろ?」


その質問の意図が分からず俺は聞き返す。


「何の話だ」

「ああ、ブルース・リー主演の映画さ…おっと気にしないでくれ。ただ、ちょっと言ってみたかっただけなんだ」

「それより、あんたがここのリーダーか?」

「いや、違うよ。僕はあくまで一介の幹部さ」

「まあいい、お前も倒してやるぜ!」


すると、男は片手を突き出して言った。


「せめて僕から名乗らせてくれ。僕は 獣澤食尽けもざわしょくじん。『thee(中略)絶許団』幹部にして、絶許団公式ヒグマ使いさ」


獣澤が持っている鎖を引き、ヒグマに何かを促す。


「グルルルル……」


すると、ヒグマはこちらを睨んで威嚇してきた。


「どうする? 君たちもこの子と戦うかい?」

「当たり前だ!」


俺がそう言うと、真紅郎はテーザーガンを構えて叫んだ。


「行け、ジョイフル! こいつら全員食らっていいぞ!」


獣澤がヒグマに命令を下す。


「グアアアッ!!」


すると、ヒグマは雄叫びを上げ突進してくる。

真紅郎はそれをかわしつつ、テーザーガンを撃ち込む。


だが、まるで効いていない様だ……。


「無駄だよ……こいつは体毛が絶縁仕様でね」


そう言いながら獣澤は、懐から取り出したリモコンを操作する。


「グガアァー!」

「うわっ!?」


真紅郎は突然暴れ始めたヒグマに弾き飛ばされてしまった。


「くそ……」

「フハハハ! ジョイフルは賢くて凄いだろ? さあ、この子の相手をしたい奴はいるか?」


そう言いながら、またもやリモコンを操作し始める。

「グアアアーッ!!」

「ぐあっ!?」

「タケル、大丈夫!?」


今度は俺が吹き飛ばされた。


「おい、貴様何をしている!?」


サクヤは獣澤に詰め寄る。


「ん? なんだ、君は? まさか、僕のジョイフルと戦いたいのかな?」


「そうだ、早く戦わせろ」


サクヤは怒気混じりに言い放つ。


「君みたいな女の子は初めてだ…ジョイフルに生きながらズタズタにされ、椎名の娘より先にあの世に送ってあげるよ!」

「やってみろ……」


そう言って二人は対峙した。

俺は立ち上がり、二人の戦いを見守る事にした。


「グルル……」

「来ないのか? なら、私から行くぞ……」


サクヤは腰を落とし構える。


「ふん、君には無理だ……」


獣澤は嘲笑いながらリモコンのスイッチを押した。


「グアアアーッ!」


ジョイフルが雄叫びを上げ、サクヤに突進する。

最早これまでか?俺がそう思った瞬間……


「シッ!!」


サクヤが消えた。


そして、次の瞬間にはジョイフルの顎を蹴り上げていた。


「なにぃ!?」


獣澤が驚きの声を上げる。

俺は思わず呟いた。


「……え?」


サクヤのスピードが今までとは比べ物にならない程速くなっていたのだ。


「なんだ、今のは……? 速すぎる……それに、力も上がっているだと……?」


獣澤は狼惑していた。


一方、ジョイフルはひどく狼狽していた。

サクヤはそれを見て呟いた。


「ジョイフル…アンタに恨みはないけど」


そして、ジョイフルの頭部に正拳突きを食らわせ反対側まで貫いた。

ジョイフルは絶命した。


「ば、馬鹿な……ジョイフル…僕のかわいいジョイフルが…」


獣澤はショックでそのまま独り言をブツブツ呟き始めた。

もはや戦意は残ってないだろう。

俺達は獣澤を窓から投げ捨て、最上階へ歩を進めた。



いよいよだ…。

待っててね、美雪さん。

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