第11話
二週間後。
真紅郎、サクヤ、俺の3人は某県の外れのとある建物の前にいた。
幸いな事に連中は美雪さんをすぐにどうこうする気は無いようだった。
更に美雪さんが監視の目を盗んで連絡してくれた…これには俺だけでなく美雪さんのご両親も思わず涙ぐんでしまった。
そして、その建物の住所を聞き出し、ここまでやってきたのだ。
「着いたぞ……」
そこは周りを高い塀で囲まれていて、入口の門扉には『thee(中略)絶許団』と書かれた看板が掲げられていた。
どうやら連中もその長い名前を煩わしいと思ってるらしい。
「じゃあ、行くか」
俺達は敷地内へと足を踏み入れた。
「よく来たな…椎名の娘の友人たちよ」
俺たちの目の前に初老の男が現れ、話しかけて来た。
「誰?」
真紅郎が警戒しながら聞く。
「ああ、すまないね。私は『The Empress of the empire』の総帥だ」
「『帝国の女王』?」
真紅郎が首を傾げた。
「ああ、そうだ。もともと椎名とつるんであちこちで悪さをしてたんだがね、あやつがグループを解散させる段になって『絶許団』の連中と揉めて分かれたのさ…私は椎名と君らの味方さ」
「それで…何しに来たんだ?」
「この本部は5階建てのビルになってて、それぞれに手強い幹部が待ち構えているんだ。それを説明しに来た」
「説明?」
「ああ、椎名の娘を救いたいなら各階にいる幹部を倒し、最上階に待ち構える総帥を倒さねばならない…君たちにそれが出来るか?」
「当然です」
真紅郎が即答した。
「そうか、では健闘を祈るよ……」
初老の男はそう言い残して立ち去った。
どうやら本当に説明だけしに来たらしい…典型的なRPGのモブキャラか?
「とりあえず、1階から順番に回ってみるか……」
真紅郎の提案で俺達はまずは1階を探索する事にした。
「ここは食堂みたいだ……」
真紅郎が呟くように言う。
確かにテーブルがいくつも並んでいて、奥には厨房らしきものもある。
「誰もいないな……」
すると、全身をプロテクターで包んだ大男が俺たちの前に立ち塞がった。
「我はテシウス・内藤…『絶許団』幹部だ。貴様らがあの娘の友人たちか?」
「そうだけど……」
真紅郎は油断なく身構えながら答えた。
「ならば、我が相手をしよう……かかってくるがよい!」
そういうや否やテシウスと名乗った男は腰に差してあった剣を抜き放ち、斬りつけてきた。
「危ない!」
サクヤが剣撃を回避しつつテシウスに蹴りを食らわせる。しかし、奴はビクともしなかった。
「フハハッ! そんな攻撃は効かんわ!」
「なら、これならどうだい?」
真紅郎は自宅から持ってきたハワイ土産の銃を構え、発砲する。
パンッ! 乾いた音を立てて銃弾は命中したが、やはりダメージは与えられなかったようだ。
「無駄だぁっ!!」
そう叫ぶとテシウスは手に持った剣を振り下ろした。
ガキィン!! 俺は咄嵯にサクヤを突き飛ばし、その攻撃を金属バットで受け止める。
「ぐぅ……重い」
何とか押し返そうとするが、相手の方が力が上なのかジリジリと押されていく……。
「フフフ…どうした? 貴様の力はそんなものか?」
「うるせぇ! お前こそ、こんなもんか!?」
俺は挑発するように言った。
「ほう? まだ余裕があるのか……面白い、少し遊んでやる」
「やってみろよ!」
俺は力を込めて相手の剣を押し返す。
「むう!?」
そして相手が怯んでいる隙に間合いを取り、バットを構えた。
「はぁあっ!!」
俺は気合と共に振りかぶって殴りかかるが…
「甘いな……」
「え!?」
俺の攻撃はあっさりと避けられてしまった。
そして……
ドゴッ!
テシウスは俺の横の地面に剣を叩きつけその衝撃でひるんでいた。
チャンスだ。
まず、真紅郎がテーザーガンをテシウスに撃ち込み感電させ、その後俺とサクヤが金属バットと蹴りを交互に食らわせた。
奴はしばらくして動かなくなった。
「待ってて、美雪さん…」
俺たちはテシウスの四肢の骨をしっかり粉砕すると2階に上がった。
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