第10話

翌日、学校終わりに通院するサクヤを見送った俺と真紅郎は美雪さんのご両親に呼び出された。


「昨日は大変だったみたいね」


そう言いながら俺達にお茶を出してくれたのは美雪さんのお母さん。


「ありがとうございます。それで、今日は?」

「ああ、実はね……美雪の事なんだが」


美雪さんのお父さんが話を切り出した。


「実は『(前略)絶許団』が想定以上の規模に増大しててね…美雪の救出に失敗してしまったんだ」

「そんな!?」

「しかも、奴らは『Thee任意団体椎名殺人鬼夫妻絶許団』として全国に支部を作ってて、警察でも手が出せない状態になってる」

「じゃあ、これからどうなるんですか?」

「それは分からない。だが、手ぶらで帰るほどオレたちも甘くはないさ…」


美雪さんのお父さんはそう言って俺たちを裏手の物置に案内した。


そこには両手足を縛られたタンクトップの男が転がっていた。


「こいつは昨日のチンピラの一人だよ。ちょっと時間をかけて喋って貰ったのさ」

「一体何を聞いたんですか?」

「奴らの目的さ」

「なんだったんですか!?」

「『美雪ちゃんを拉致して人質にして、身代金を要求するつもりだった』だってよ……」


真紅郎が俺の代わりに質問してくれた。


「だから、美雪ちゃんはさらわれたんですか……」


すると縛られて押し黙っていたチンピラが唐突に喋り始めた。


「ヒヒッ…椎名さんよぉ、俺をいたぶっても美雪ちゃんは出てきやしませんぜ…」


バキッ


美雪さんのお父さんは無言でチンピラの横顔にパンチを食らわせた。


「グハァッ!」

「おい、お前……まだ生きてるか?」


チンピラは口から血を流しながらも答えた。


「ここ、殺せ…殺すんなら殺せ!」

「そうかい、それじゃ遠慮なく」


美雪さんのお父さんは再び拳を振り上げ……そのまま下ろした。


ドゴッ!

鈍い音が響くと同時に男は白目を剥いて気絶してしまった。


「……これでよしと」

「あの、これは?」


俺は恐るおそる聞いた。


「こいつにはもう用は無いからな。このまま放置するんだ……それと、美雪の居場所も聞き出せそうにないからな……」

「そ、そうなんですか……」

「まぁ、美雪が監禁されてるのは間違いないだろうけどな……恐らく『Thee椎名殺人鬼夫妻絶許団』のそれ程遠くないどこかの拠点だろう」

「拠点? どこにあるのか分かるんですか!?」


俺は身を乗り出して言った。

すると美雪さんのお父さんはニヤリと笑いながら答えた。


「ああ、もちろんさ……」

「本当ですか!?」

「ああ、教えてやるさ……」


今度こそ、美雪さんを助けられるかもしれない……。

俺は逸る気持ちを抑えつつ話を聞いた。

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