第9話

「うぉらっ!」


大男が振り回してくる金属バットを俺は避け続けた。

そして、男の懐に飛び込むと腹パンを食らわせた。


「ぐふぅ!」


胃の中の物を吐き出しながら、男はそのまま倒れていった。


「真紅郎!」


俺は真紅郎に向かって叫んだ。


「分かってるよ!」


真紅郎は俺の意図を理解し、サクヤの方へと向かっていった。


「この野郎!」


残ったチンピラの一人が真紅郎を捕まえようと飛びかかった。


「うぉっと!」


真紅郎は身を屈め、その攻撃をかわすと……


「こっちだ!」


そのままチンピラを蹴り飛ばした。


「グハッ!」


蹴られた衝撃で吹っ飛んだチンピラは屋上の手すりにぶつかり、落下していった。


「ヒィイイッ!?」


俺たちの善戦で連中が次々と倒されていき、残るはリーダー格の男一人となった。


「フフフ…ここにいるのが俺等だけだと思うか?」

「どういう事だ?」

「『任意団体椎名殺人鬼夫妻絶許団にんいだんたいしいなさつじんきふさいぜっきょだん』は全国展開してるんだよ…そう、あの娘の両親にいたぶられた奴の数だけな」

「まさか……」

「予想外に手こずったから増援を呼んだのさ…おっ」


そう言うと、リーダー格はポケットからバイブで鳴動するスマホを取り出し、電話に出た。


「……もしもし、こちら本部……はい、分かりました」

「もうすぐ応援が来る。観念するんだな……」

「くそ……」


どうすればいい?このままでは捕まってしまう。

外の方では既に車数台分の音も聞こえてきている…。


すると、俺のスマホのバイブが鳴動した。

こんな時に電話?

相手は『緊急連絡先』…美雪さんのお父さんからだ。


「もしもし」

『タケル君、無事か!?』

「はい、なんとか……」


俺は簡潔に今の状況を説明した。


『……分かった。とりあえずダッシュでアジトから離れてくれ』

「しかし、美雪さんは?」

『美雪なら大丈夫。さ、急いで離れて!』


俺と真紅郎とサクヤはリーダー格が呆気にとられてる隙をついて廃ビルから逃げ出した。


すると、上空から何かが廃ビルに向けて急降下し貫通、爆発した。

それが増援の連中の車にも襲いかかり、あちこちで派手な火柱を立てていた。


すると、また美雪さんのお父さんから電話がかかってきた。


『どうだい? 無人強襲用ドローンの威力は?』

「すごいですね……」


俺は感心していた。


『だろ? 後は俺たちに任せて帰りなさい。美雪にもタケル君達の活躍は伝えておくから』

「はい!」


どうやら美雪さんのご両親は帰国されてたらしい。

俺たちはその言葉に甘え、美雪さんの無事を祈りながら帰途に着いた。

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