第5話
……………… その日は唐突にやってきた。
「リアリティーショー?」
「そうなんだよ、今度『おしどり夫婦の快楽殺人行脚』ってリアリティーショーをテレビで放送するらしくてね…」
ここは美雪さんの実家。
美雪さんのご両親が俺に用がある、と美雪さんに言われたので来たらこれだ。
「……で、それがどうかしたんですか?」
「これまでにも国内外の殺人鬼夫婦にスポットをあてた番組があったのは知ってるかい?」
「はい、少しだけ……」
確か、去年の暮れにも『世界で一番危険な愛妻家』とかいう番組で海外の殺人鬼男性二人が奥さんを殺された後、犯人を捕まえて殺害するために協力していたはずだ。
「おお、詳しいじゃないか。実はその番組のディレクターが『これからは殺人鬼夫婦の日常がウケる!』って思ったらしく、俺達にコンタクトを取ってきたんだ」
美雪さんのお父さんはご機嫌だ。
「えっと……つまりどういうことですか?」
「今後、取材が入るに当たって美雪と君たちがカメラに映ることもあるかも知れないから……一応伝えておくよ」
「……わかりました」
俺はそう言いつつ嫌な予感を感じていた。
そしてそれは少し的中することになる。
「それじゃ、早速だが……明日から一週間ほどロケで海外に行ってくる。特に何かある訳じゃないが美雪とよろしく頼む」
「はい!」
俺は元気よく挨拶をした。
そして翌日。
いつも通り美雪さんと一緒に登校している時だった。
「ねえ、タケルくん」
「なんだい?」
「昨日の事なんだけどさ、あの『ラ・ペディス』に取材が来るらしいんだよね。私達が撮影されるかもしれないって言ってた」
「ああ……そういえばそんな事を言っていたなぁ」
「それでさ、もし撮られた場合……私たちの事を隠し通せると思う? ほら、今までずっと一緒にいたわけだし」
「やましい事は何も無いし…多分、大丈夫」
「そっか……そうだといいけどさ」
「心配性だなあ、美雪さんは。それにしても……どうして急にこんな事になったんだろうか」
俺は疑問を口に出した。
「うーん……そうだね、ニュース番組の取材なら何度かあるけど、バラエティ番組は初めてだし……」
「……なんにせよ、俺達は俺達のままでいれば良いんじゃないか? 別に悪いことをしてる訳でもないしさ」
「……そうだね」
美雪さんは少し不安げだった。
それから数日が経ち、今日は土曜日。
美雪さんは朝早くから所用で母方の実家へ帰省し、俺と真紅郎は珍しく二人で遊びに行くことになっていた。
しかし、その予定は突如として崩れ去った。
「……タケル、大変なことになった」
真紅郎は深刻な顔つきで言う。
「どうしたんだよ? そんな顔をして」
「落ち着いて聞いてくれ」
「うん」
「……美雪ちゃんが誘拐された」
「……はい?」
「だから、美雪ちゃんが誘拐されちゃったんだ!」
「……マジかよ!?」
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