第2話

それは、数日前の授業が全て終わった放課後の事。

いつものように真紅郎と一緒に下校していた時のことだ。

学校を出てしばらく歩いていると、突然真紅郎が立ち止まったのだ。


「ねぇタケル」

「ん?」

「今日さ、ちょっと寄り道していかない?」


そうそう、俺の事も紹介しないとな。

俺は『真白猛ましろ たける』って言う名前なんだが、この名前だと男か女かわかんないよな。なので、普段から名前のタケルと呼ばれている。

あと、俺は真紅郎とは小学校からの仲になる。俺の方は中学一年からの付き合いだけど、未だに真紅郎の実像は分からない。何せ前の学校では奴と一緒にPTAや教育委員会と…なんでもない。

ともかく、今日はバイトもないし特に予定もない。

それに真紅郎が何やら企んでいるような笑みを浮かべていたので、俺は快く承諾することにした。


「いいぜ。どこに行くんだ?」

「それは着いてのお楽しみだよ。ほら、行こう!」


真紅郎はそう言って歩き出した。俺はその後ろ姿を追いかけていく。……………… たどり着いた先は小さな公園だった。


「ここに何があんだよ?」


俺は訝しげに真紅郎に聞く。


すると、ヤツはニヤリと笑いながら言った。


「ふっ……よくぞ聞いてくれたね。実はここ最近、ある噂を聞いたんだよ……」

「……まさか、また変な都市伝説とかじゃないだろうな? お前そういうの好きだったっけ?」


俺は呆れたように言い放つ。


「まあ、そんな所かな…? ところでさ、この辺に快楽殺人鬼の夫婦が潜んでるらしいぜ」

「マジで!?」


思わず食いついてしまった。…… そして現在、俺たちはその快楽殺人鬼を探している最中だ。


「おい真紅郎! あれじゃねえか? あのベンチに座っている人って絶対そうだって!!」


俺は興奮気味に指差す。そこには一人の女性が座っていた。

年齢は20代前半ぐらいだろうか?

長い黒髪を一つに束ねており、どこか気品のある雰囲気を醸し出している。

その女性は、俺達を見るなりこう言った。


「あなた達…私を殺しに来たのね! でも残念だったわね、私はただ散歩しているだけなの。だから……殺してあげる♪」


そう言うと、彼女は手に持っていたナイフを振りかざした。

その瞬間、真紅郎が動いた。

咄嗟に彼女の手に蹴りを入れ、ナイフを落としたのだ。


「逃げるぞ、タケル!」

「あ、ああ!」


俺は急いでその場から走り出す。…… 俺達は必死に逃げていた。

しかし、後ろからは彼女が追いかけてくる足音が聞こえている。このままでは追いつかれてしまうだろう。

どうするべきか考えている時、目の前にある物が見えた。

それは180メートルはあろうかという大男だった。


「…見たぞ? うちの女房に蹴り入れたな?」


男はそう呟き、ゆっくりとこちらに向かってくる。

……これはもうダメかもしれないと思ったその時、男が突然倒れた。

倒れ込んだ男の頭には大きなタンコブが出来ている。

そして、その背後には見覚えのない少女がいた。


「大丈夫ですか?」


その声は鈴の音のように綺麗だった。


「えっと、ありがとうございます。助かりました」


真紅郎は礼を言う。


「いえ、気にしないでください。たまたま通りかかっただけですから」


その言葉を聞いて、俺はその少女の顔を見た。

なんと愛らしい瞳…そして、艶やかな唇。

まるで天使のような美少女だった。


「あっ、自己紹介がまだでしたね。私の名前は『椎名美雪しいなみゆき』と言います。よろしくお願いします」


…… こうして、俺たちは出会った。

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