ラ・ペディス
芥子川(けしかわ)
第1話
俺は無言のまま、目の前に座る人物を見つめていた。
場所は喫茶店『ラ・ペディス』。
俺が通う高校から徒歩10分程の所にある、学生の味方であるリーズナブルな価格で提供してくれるお店だ。
店の雰囲気は全体的にレトロチックで昨今の店には珍しく喫煙席も用意されているので、寸暇を惜しんでタバコを吸いに来るサラリーマンにも好評だ。
ただ空気清浄機はあっても分煙されている訳ではないので、タバコの煙はある程度漂ってしまうのだが。
そんなレトロチックな雰囲気のある店内だが、今日に限って言えばいつもとは違う空気感に包まれている。
それは、この場にいる3人のせいだろう。
「あーもうっ! なんなんだよ一体!」
テーブルに肘を置きながら、苛立ちを表すように指先でコツコツと叩く音を立てているのは、同じクラスの真紅郎だった。
真紅郎…本名を『
ちなみに俺はこいつのことをタメ口で話しているし、こいつからもそうするように言われてる。
まぁ、仲良くさせてもらっている友達の一人だ。その隣に座っている金髪碧眼の少女は、同じくクラスメイトのサクヤ。こちらは本名を『
朔夜は同学年ではあるが、転校した年度と単位の関係で1.5歳年上だったりするが本人曰く「バッドラックとダンスっちまったからしょうがないねー」との事だ。そして、俺たち三人の視線を浴びて居心地悪そうにしているのは、俺たちと同じクラスの女生徒―――椎名美雪さん。
彼女は俺の隣の家に住んでいる幼馴染みであり、今は俺の恋人でもある。
両親が新聞やニュース番組で報道されるレベルの快楽殺人鬼で現在も逃亡中らしく、たまにProtonMailやTelegramでコンタクトを取っているらしいが、それ以上の事は俺も知らない。
ただ、美雪さんと付き合い始めた当初、俺の自宅に鶏の生首のミイラと共に「美雪を悲しませたら地の果てまで追い詰めて殺す。美雪の両親より」という内容の手紙が入ったレターパックが送り付けられて来た事があり、それ以来は彼女の両親について詮索する事は止めた。
そんなこんなで、俺たち四人は放課後に集まってお茶をしていたわけだが……どうしてこうなったのか、今に至るまでの経緯を説明しようと思う。
発端は些細な出来事だった。
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