暴力が与えたもの

第28話 妹

妹は『極度の』だった

何をするにしても母親から離れなくて

唯一、母親の暴力被害を受けなかった


自分には反抗期は無かったが

妹には、ちゃんとした反抗期があった


妹は母親に似て人だった

だから自分も妹にやられてた

そのせいで痣になったこともあった


「あーむかつく」

「痛いって」

「そんなん知らんし」


昔は妹と一緒に女の子遊びをして

親が動かない時は自分が面倒見て

妹が虐められてたら守ってあげて

そうやってたのに

そう思わざるを得なかった

悪者はいつも自分だった


妹は、ずる賢いのに学はなかった

だから入れる学校も少なかった

妹は『私立』の学校に行きたかったみたいだ

自分や親は『県立』の学校を勧めた

でも言うことを聞かなかった

塾まで通わせた

でも変わらなかった

仕方がないから『私立』に入った


教科書を買うのに遠くに出ないといけなかった

母親と一緒に出かけないらしく

「一緒に行ってきて」

「え?何で?」

「2人で行けるでしょ」

「何で自分が……」

「いいから行け」

「分かったよ……明日行く時間になったら起こして」


当日、妹は出かける時間に動き出さずグズっていた

「教科書取りに行くよ」

「教科書ぐらい1人で行ってきたらいいじゃん」

「ほら行こうよ」

「行く時間とっくに過ぎてるじゃん。それに1人で行けない歳じゃないじゃん」


妹はこのことを母親にチクったらしく

『妹について行かない』ことに腹を立てた母親は、言うことを聞くように自分に暴力を振るった


これがきっかけじゃないかもしれないけれど

その時の自分も妹も母親も

これが家族崩壊に至ったなんて思っていなかった




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