第29話 暴力の果て

母親は『』人だった

だから断酒した父親の前でお酒を飲み

言うことを聞かない自分に暴力を振るった

父親が止めてくれたこともあった

けどそれは……意味がなかった


『親から虐待を受けてる』

当時の友達にこの話をした

怪我を作ってしまったことも言った

「やられたらうちに来なよ」

その友達は地方から来ていて学生寮に住んでいた

「うん。そうする」


妹の『教科書を取りに行く・行かない』で口喧嘩になった

「何で行かないの?」

「昨日言われたことと違うし、それに自分で行けばいいじゃん。1人で行けない歳じゃないんだし」

「何で言うこと聞かないんだ!!」

「は?言うこと聞かないのは妹でしょ?」

「聞けないなら死ね!!」


母親の怒りを買ったらしく暴力を受けた

でも、今まで受けてきたものとは違っていた

自分の部屋にある掃除機や扇風機を手に取り

それを頭やお腹に殴ってきた


「(それが頭に当たったら死ぬかもしれない)」


一生懸命避けつつガードしていた

けど……

「痛い!!」

「何で避けるんだよ!!」


「(避けなきゃ死ぬし)」


「早く死ね、早く死ね」

繰り返し繰り返しそう言われた


その時思い出したことがあった

それは母親の支援に入っていた方に相談した時に話してたことだった

「母親から暴力受けてて……」

「やり返せばいいじゃん」

「(いやいや……そうしたら障害者虐待じゃん)」


それを思い出した自分は

母親がしたことを自分もした

「お母さんが死ねばいいんだよ!!」


それを誰も止めることも無く

父親が戻ってきた時には解決していた

「何があった?」

「お母さんにやられた」

「そうか」

「学生寮に連れてって」


軽傷で良かったものの

あちこちぶつけていたり

擦り傷を作っていた


「友達の寮に逃げるから、学生寮まで連れてって」

「分かった」


父親の車で学校まで連れてってもらった

「ありがとう」

「しばらく帰らない方が良いかもな」

「うん。友達に言っておく」


友達に連絡して、しばらく泊めさせてもらうことになった

「ほんとごめんね?」

「大丈夫だよ」

「着替えとか持ってきてなかったわ」

「じゃ買いに行く?」


友達の来る前に乗せてもらって

自分の着替えを買いに行ったり

友達の要望でショッピングモールに行ったりした


ちょうど15:00になったところだった

「あ」

「どうした?」

「父親から連絡」


メールには

「実家に帰る、お母さんのことについて相談してくる」と書いてあった


「実家に帰るみたい」

「そう」

「家に帰れそう」

「それなら良いんだけど……」


一通り楽しんだ後に自宅に帰った

両親はいなかったが妹は残ったみたいだった

「一緒じゃなかったの?」

「バイトもあるし……あと姉ちゃんのせいで帰れなかったんだけど」

「それは知らないし」


時々、父親から連絡が入って

『今、ここにいる』とか『母親の様子はこうだった』とか色々聞くことができた

「お土産何がいい?」

「いつものあれがいい」

実家に帰る時に買ったり、実家から送って貰うものの中に毎回入っているものがあった

『米100%のせんべい』だった


「帰りに買ってくるよ」

「何日頃帰れそう?」

「○○日に帰ってくる」

「そっか」


ちょうど週末に学校の予定があって

早めに帰ってきて欲しかった


「早く帰ってきてね」


ようやっと事実が伝えられるんだ

ようやっと母親の虐待に怯えなくて良いんだ

ようやっと離婚してくれるんだ


そう……




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