第26話 断酒に向けて
父親は数ヶ月で退院出来た
「数ヶ月ぶりの家はどう?」
「病院よりはマシかな」
「そっか」
「病院でこういうのを受けたんだ」
父親はファイルの中身を見せてくれた
『アルコール依存症に対するプログラム』
それには『アルコール依存症とは何か?』から『お酒が影響するもの(こと)』だったり『今後の治療』や『禁酒に向けてどうするか?』など、講習みたいなのを受けてきたらしい
「へーすごいねぇ」
「そういえば、手首につけるやつで文字入れられるやつあるだろ?」
「あるけど?」
「忘れないように、入院の時の番号を入れておきたいんだ」
「ふーん。素材頼んでみるよ」
言われた数字とアルファベットを入れたブレスレットを父親にあげた
父親は嬉しそうに毎日つけていた
仕事の関係上、24時間付けるのは難しく、車の中に飾ってあったりした
アルコール依存症の人は、通院して抗酒剤を飲む治療もするが
断酒会という当事者の集まりに参加して、アルコールの怖さを認識し、再発防止をするようなものだそうだ
「断酒会行ってみる?」
「行かない」
「何で?」
「そういうの嫌いだから」
「……はぁ」
父親は通院して抗酒剤を飲むことで、断酒することが出来た
けれど……
「お酒買ってきたの?」
「お母さんが呑みたいから買ってきたの」
「お父さんは?」
「お父さんはノンアルコール」
母親は父親がいる前で飲酒した
強制的に呑めなくなった父親からしたら、それは不満だったかもしれない
それでも、最近のノンアルコールビールはビールっぽい感じがするらしく
飲酒している母親の前で、ノンアルコールビールを呑むことは辛くないように見えた
「(本当に禁酒して断酒出来たんだ)」
そう思ったのに
「嘘つき……」
そう思わざるを得なかった
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