第25話 強制的な治療

父親は主治医や母親の説得によって

閉鎖病棟に入院することになった

住んでいる地域に『閉鎖病棟』がある病院の方が少なく、小さい病院(クリニック)の方が多かった

そのため紹介状を持って都会にある医大の閉鎖病棟に入院するという方向になったそうだ


「えっと……刃物はダメ、紐が付いているのもダメ、持っていくものには名前を書くように……」

「何してるの?」

「入院するのに準備してるの。色々ダメなものがあるみたい」

「へー」


閉鎖病棟には持ち込み不可のものがある

刃物類は自傷行為に繋がったりする可能性があるから不可

紐は自殺防止のために不可

タバコやライターは盗難や火事の危険性から持ち込み不可

スマホも持ち込み不可で連絡手段は病院か公衆電話

お金の持ち込みも少量だけだった


「お父さんいないと楽だね。何回も同じこと言われなくて済むし」

「そうだね。3人の方が気が楽だもんね」


父親が入院している間、自分自身に対する命の危険があっても、父親がしでかす問題が無くなった分

『行方不明になる』ことや『人を轢きかねない不安』は無くなった


「今度病院行くけど付いてくる?」

「うーん……まぁついて行くよ」

父親から連絡が来ることが何回もあった

それは『悪化している』というよりも

『許可が下りたから差し入れして欲しい』とのことだった


父親は他の患者さんとは違って問題行動がなく

その為、看護師さん・ワーカーさんの許された範囲で、刃物を使う(髭を剃るため)ことだったり、タバコを吸ったり、病院内ではあるが庭に散歩をしたりと、自由が効くようになったらしい


「すみません」

「はい」

「面会なんですけど」

「今呼んできますね。この部屋でお待ちください」


通されたのは鍵付きの面談室だった

多分だけど、脱走防止につけてるんだと思う

閉鎖病棟に入るのにも鍵がついてて、インターホン鳴らさないといけなかった


「終わったらこのボタンを押してくださいねぇ」

「はい」


「元気にしてる?」

「まぁ。更生プログラムを受けて頑張ってるよ」

「そう。言ってたこれ、後で預けておくから」


差し入れの中に父親が言ってたものが入ってたんだけどテレホンカードも入っていた

公衆電話しか連絡手段がない病院の中で

お金を使うことはもったいなく

テレホンカードを数枚買った


「ありがとう助かったよ」

「もう少しで面会終わりなんですけど……」

「あっはい。じゃまたね」


父親から見送られて自分たちは家に帰った


この入院が意味があったかどうかは

後で知ることになった


「何で……」

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