第22話 お酒がくれたもの

父親が酒に溺れてから

自損事故や行方不明未遂を何度も起こした


車を縁石にぶつけたり

車で沼に突っ込んだり

飲酒運転も頻繁にするようになり

蛇行運転も中央線から出たり戻ったりを繰り返すようになった


「ほんと何やってるの!!」

「……。」


父親は悪い意味で


電話をかけても連絡が繋がらず

警察にお願いをしたこともあった


「そうですか……いませんでしたか……」

「警察の人何か言ってた?」

「『全く見つからない』って」


見つかったと思ったら

霊園のある道の横にいて

柿を食べていたそうで

後日、行方不明になった時のことを話してみると

その場所に連れて行かされて

「この場所に座ってたんだよ。近くに柿の木があるだろ?その柿を食べたら不味くてさ……」


真っ直ぐ帰ればいいのに

何で普通に帰れないんだろ


それから何回も行方不明を繰り返して

夜中にインターホンが何回もなった日があった


「ねぇインターホン鳴ってるよ?出ないの?」

「全く……こんな夜中に……」


「はーい」

「警察の者なんですけど。この酒飲み何とかして貰えます?」

「拘留所か何かに入れて貰えないんですか?」

「そういうことは出来ないんですよ。だから家に入れてください」

「分かりました」


この時から、『父親が帰ってくるまでに人を轢き殺してしまったら……』と考えるようになり

アルコール検査機を買ってきて

毎度帰ってきたら測るようにした

法律で『吐く息の0.15以上』だと飲酒運転になってしまうらしい


「ほら!!測るから息吐いて!!」

「呑んでないから」

「いいから息吐いて!!」


測ると思いっきり『』だった


「ほら!!どこで呑んでるの!?」

「だから呑んでないって」

「数値出てるじゃん!!」

「もう寝る」

「人の話聞けよ!!」


そこから喧嘩になる日が多くなった

自分の知ってる父親は

もういないかもしれない


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