第五章

第15話

「どうして私の告白を断ったのか、一〇〇〇文字以上二〇〇〇文字以内で説明してもらわないことにはこちらも納得できないよ」


「結構な文字量要求してくるな!」


 放課後、たまたま廊下で会ったと言い張るが、明らかに俺を待ち伏せしていたであろう女生徒が人目も気にせず詰め寄ってくる。


 あの日、放課後の校舎裏で俺に愛の告白をしてきた女生徒がいた。

 彼女の名前は天王寺紗千香。

 その名前を俺は後に知ることになった。


「当たり前でしょう、私の告白をお断りするということがどういうことか分かっていないようね」


「そんなことないですけど」


「普通の男子ならば一秒と考えることなく即オッケーを出すこと間違いないわよ」


 まあ、確かに尊とかならその反応をしている姿が容易に想像できるけれども。

 彼女の言っていることはあながち間違いでもない。


 後に尊から聞いたのだけれど、天王寺紗千香は校内ではそこそこ人気のある女子生徒らしい。三年生間ではもちろん、学年の垣根を超えて下級生にも人気がある。その理由として上げられるのは美しい容姿に抜群のスタイル、そして何よりも溢れ出るお姉さん感。


 尊曰く、「バブみを感じる」だそうだ。


 その話を聞いて、ますますあの告白が分からなかった。

 それだけ人気の女子生徒が、俺みたいな窓際族の生徒に告白する理由が思い当たらない。


「ねえ後輩くん。どうして私の告白を断ったの?」


「逆に聞きますけど、なんで俺に告白したんですか?」


 俺がそう聞くと、天王寺先輩は決まって困った顔をする。


「うっ、それは、えっとぉ……一目惚れ的な?」


 そして、決まって誤魔化すように答えるのだ。


「そんなことはどうでもいいでしょ?」


「いやよくはないでしょ」


「あーもう分かった! じゃあこの話はやめやめ!」


 そう言って、天王寺先輩は大きく首を振る。

 だいたいこの流れに持っていけば彼女はいったん諦める。

 まあ、後日同じようなことがまた起こるんだけど。


「ところで後輩くん、今日はもう帰るのかな?」


「まあ、はい」


「よし、それじゃあちょうどいいからデートをしよう」


「ええ?」


 俺が濁った声を出すと、先輩はぷくっと膨れる。


「放課後デートだよ? この紗千香先輩と二人でだよ? 断る理由ある?」


「ないですけど」


「じゃあいいじゃん!」


 いや、でも行く理由も見当たらないんだよなあ。

 この人のこと、苦手ってわけじゃないけどどうにも考えていることが読めないというか。つまりちょっと苦手ってことなんだけど。


「他の生徒の視線が怖いんでちょっと離れてもらっていいですか?」


「いいじゃん、有名人になった気分でしょ?」


「パパラッチ狙われてる気分なんだよ!」

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