第14話
「あら」
水琴と別れた後、帰り道で撫子と遭遇した。
撫子も寄り道をしていたのか、だとすると帰り道も一緒なのでこうして会うこともあるだろうけど。
「よお」
「可愛い後輩さんとのデートはもういいんですか? 兄さん」
「な、なんで知ってる!?」
撫子からの突然の話に、俺は思わずブフッと吹いてしまう。顔は笑っているのに何故か後ろからはマイナス的なオーラを感じる。
「いえ、たまたま見かけただけですよ。深い意味はないです」
「……そっすか」
「ええ。兄がどこぞの誰と、どこで何をしていようと妹のわたしには全然全くこれっぽっちも関係のないことですから」
全然そうは思っていない言い方なんだけど?
え、なに、俺なんかしたっけ? 怒らせるようなことをしたか、俺は必死に記憶を巡らせるが覚えはない。
「ていうか、兄さんって何?」
「兄さんは、兄さんでしょう?」
「突然のキャラチェンジは読者が困惑するから止めたほうがいいぞ?」
「何ですかそれは……義理とはいえ、兄なのですから兄さんと呼んでなにがおかしいんですか? それとも、お兄ちゃんの方がいいんですか? ああもう、変態ですね」
「誰もそんなこと言ってないでしょ?」
どうにも、撫子の雰囲気がいつもと違う気がするのでこちらも困惑する。突然のキャラチェンジに困惑しているのは、どうやら俺だったようだ。
「何か文句あります?」
「いえ、これっぽっちも。強いて問題点を言うならば、俺に妹属性が追加されそうで怖いかなあくらいですね」
あはは、と冗談めかして言ってみる。
すると、いつもならばツッコミがくるところなのだがいつまで待っても飛んでこなかった。
「ばかなこと言ってないで、帰りますよ」
くるりと回って前を向く。
歩き始めた撫子を追うように、俺は駆け足をした。
「何か、買って帰るか? もちろん、兄さんの奢りですけど」
よく分からないが、ご機嫌を取っておこう。このまま家でもぷんすかされていては居心地が悪くて仕方ない。
「それくらいでわたしの機嫌を取ろうというのは浅はかな考えですけど、今回は乗ってあげます」
「あざす」
「じゃあ行きましょうか、兄さん」
兄さん。
その言葉の響きはやはりまだどこかむず痒い。
けれど、俺と撫子が兄妹であるということを改めて再認識できるので悪くはない。
別に、兄さんという呼び方に萌えているわけじゃないんだからね!
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